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身近でもあまり知られていない浄化槽、正しく知って適切に「撤去」を

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 浄化槽は身近なもののはずですが、具体的な役割や管理方法について正しく知っているとは限りません。なかには、家屋を解体するときまで、敷地内に浄化槽があることを知らないこともあるほどです。今回は、そんな「浄化槽」について取り上げてみました。

浄化槽ってどんなもの?

 浄化槽については、「汚水をきれいにするもの」程度の理解の方はたくさんいらっしゃると思います。確かにその通りですが、もう少し浄化槽についての知識を深めておくと、解体のときや私たちの生活に欠かせない上下水道に関する知識が深まります。

浄化槽の役割

 前述の「汚水をきれいにするもの」ということを、私たちの身近にある家庭用の浄化槽を例に、もう少し詳しく説明しましょう。
 私たちの暮らしでは、洗面、入浴、調理、掃除そしてし尿などによって多くの汚水が出てきます。下水道設備が整っている地域ですと、そういった汚水は下水道を取って浄水場に流れ、そこで流しても問題ない程度に汚れを取り去って川や海に放水されます。
 しかし、日本国内において下水道設備はまだ100%整備されていません。下水道整備が整っていない地域では、各家庭に浄化槽が設置されます。浄化槽では流れ込んだ汚水や汚物が微生物の働きによって分解され、きれいな水に変えて川などに放流させます。浄化槽は各家の清潔を守るためにも、地域や国土の環境を清潔に保つためにも大切な設備です。そのため下水設備が整備されていない地域では、浄化槽の設置が義務付けられています。

浄化槽の種類

 浄化槽には、「単独処理浄化槽(みなし浄化槽)」と「合併処理浄化槽」の2種類があります。それぞれについて説明します。

① 単独処理浄化槽(みなし浄化槽)
 トイレの汚水だけを処理する浄化槽で以下の4タイプのものがあります。なお、単独浄化槽は、BOD除去率65%以上、放流水のBOD*濃度90㎎/L以下であることが定められています。
 この単独処理浄化槽は、トイレ汚水以外の生活排水の浄化の必要性も高まったことから、合併浄化槽の設置が進んできました。そのため、平成13年には浄化槽法により製造・販売が中止となり、単独浄化槽は設置されなくなりました。しかし、現在でも、まだ合併浄化槽への切り替えが行われずにいる家もあるため、その種類についても触れておきます。
*BODとは水中の有機物が、微生物の働きで分解されるときに消費される酸素の量のこと。有機性の汚れが大きいほど酸素消費量が増え、BODの値はおおきくなります。

<腐敗タンク型>
 最初に造られた浄化槽。汚物を浮遊させて分離して処理する一次装置と、その後の浮遊した汚物を処理する二次処理装置からなる。
<全ばっ気型>
 昭和56年以前に市販されていた古い規格。空気を供給して微生物の働きを活発にさせ、汚物を浄化。しかし、浄化力は低く、泥のたまりが早いため、頻繁に清掃が必要。
<分離ばっ気型>
 浄化槽内に入り込んだ汚水の浮遊物を沈殿させ、ばっ気室と呼ばれる層で汚水を空気で攪拌し、微生物のはたきを活発にして汚物を浄化する。
<分離接触ばっ気型>
 浄化槽内に入り込んだ汚水の浮遊物を沈殿させ、ばっ気室と呼ばれる槽に設置された接触材に付着している微生物に汚物を処理させる。単独浄化槽のなかでも、このタイプは広く普及した。

② 合併処理浄化槽
 トイレの汚水のほか生活排水も一緒に処理する浄化槽で、以下の3タイプがあります。BOD除去率90%以上、放流水のBOD濃度20㎎/L以下であることが定められています。

<嫌気ろ床接触ばっ気型>
 BOD除去を目的とした、現在、一般的になりつつある浄化槽。「構造方法・例示仕様型(告示型)」ともいう。最初に嫌気ろ床槽に入った汚水は嫌気性微生物により分解され、次にもう一つの嫌気ろ床槽で同様の処理を繰り返され、接触ばっ気槽に。そこで空気で攪拌されながら好気性微生物によってさらに処理される。

<性能評価(コンパクト)型>
 「嫌気ろ床接触ばっ気型」の約70%の大きさ。敷地に余裕がない場合に用いられる。

<高度処理型>
 窒素・リン・BOD除去が高度に処理できる。水道水源地域や湖沼、閉鎖性海域などでより水質汚濁防止および富栄養化防止の目的で用いる浄化槽。

法律で義務付けられている浄化槽の設置や使用の管理義務

 浄化槽の役割を知ると、私たちの生活の衛生面を保つためにも、社会全体の環境のためにも大切なものであることがわかります。そのため管理については「浄化槽法」という法律によって具体的に決められているのです。

浄化槽法について

 浄化槽法とは普段、聞くことがない法律名ですね。
 この法律は「浄化槽によるし尿および雑排水の適正な処理を図り、生活環境の保全および公衆衛生の向上に寄与すること」を目的としています。具体的には次のような浄化槽の取り扱いルールを規定し、昭和58年に制定されて昭和60年から全面施行されました。さらに、平成13年4月からは、浄化槽を設置する場合には、合併処理浄化槽を設置することがこの法律によって義務付けられています。

① 浄化槽の製造と販売
② 浄化槽設置の届け出
③ 浄化槽の工事と浄化槽設備士制度について
④ 浄化槽の使用開始報告について
⑤ 浄化槽の使用について
⑥ 浄化槽設置後の水質検査について
⑦ 浄化槽の保守点検と浄化槽管理士制度について
⑧ 浄化槽の清掃について
⑨ 浄化槽の定期検査について
⑩ この法律に違反した場合の罰則について

浄化槽を使う側の管理義務について

 浄化槽を使う人には、次のようなことが義務づけられています。
① 下水道設備が整っていない地域では、浄化槽で処理した後でなくてはし尿を公共用水域等に放流しない
② 浄化槽で処理した後でなければ、雑排水を公共用水域に放流しない
③ 浄化槽を使用する人は次のことを守らなくてはいけない

・し尿を洗い流す量は適正量とする
・浄化槽の機能を妨げるもの(殺虫剤、洗剤、防臭剤、油脂類、紙おむつ、衛生用品等)は浄化槽に流入させない
・単独処理浄化槽では、工場廃水・雨水・その他の特殊な排水を注入させない
・電気設備のある浄化槽では電源を切らない
・浄化槽の上部や周辺に保守点検や清掃の邪魔になる構造物を作らない
・浄化槽の上に浄化槽の機能を妨げるような荷重をかけない
・通気口をふさがない
④ 浄化槽の所有者を「浄化槽管理者」として次のような義務を課している
・浄化槽の保守点検と清掃を、毎年、法律で定められた回数について行い、その記録を3年間保存する。ただし、保守点検や清掃は資格をもつ業者に委託することができる
・指定検査機関による水質検査を受ける。これには使用開始後3~8カ月以内に行う「設置後等の水質検査」と年1回行う「定期検査」がある

浄化槽の設置や撤去する際の法的義務について

<浄化槽設置に際して>
 浄化槽の設置では、工事を行う前に「浄化槽設置届け」を各市町村の環境課に提出します。この書類は、主に浄化槽に関する図面や書類をまとめたものです。この書類が市町村から管轄の保健所に通知され審査が行われ、その後、工事着工となります。
 なお、設置工事基準方法は次のような条件になりますが、市町村によって若干の違いがあります。
① 浄化槽設備士の資格を有する工事業者が実施・監督する
② 掘削面積は槽の外径よりおおむね30㎝以上大きく掘削する
③ 掘削は、周辺の状況・土質・地下水の状況などに適した工法とし、土砂が崩壊しないように関係法令等に従う
④ 埋戻し材は砕石チップまたは砂を使用し、じゅうぶんな締固めを行い、埋め戻し時に浄化槽周りを機械転圧しない
⑤ 基礎コンクリートスラブの厚さは最低100mmとして、上部に車庫などの荷重がかかる場合は150mm以上とする
⑥ 基礎コンクリートの設計基準強度は、鉄筋コンクリートFC=21N/㎟以上とする
⑦ 普通地盤では砕石基礎、軟弱地盤は栗石基礎とし、敷圧は共に150㎜とする
⑧ その他、不等沈下防止のための配筋などを行う

<浄化槽撤去に際して>
 浄化槽の撤去に際しても、浄化槽法で定められた行うべきことが2点あります。
① 浄化槽内の最終清掃と消毒作業
 行政の許可を得ている専門業者に依頼し、最終の清掃と消毒作業を行ってもらいます。これをしないと、汚水や汚物が地下水路などを通って周辺を汚染したり、悪臭を放ったりして大変なことになります。また、工事も大変になります。
② 浄化槽廃止届出書の提出
 清掃作業や撤去作業が終わった日から30日以内に、「浄化槽廃止届書」を都道府県知事あてに提出します。用紙は都道府県のホームページからダウンロードでき、自治体の窓口で申請して受け取ることもできます。

浄化槽放置は処罰の対象に!

 浄化槽に関して適切に管理しないで放置することは、処罰の対象になりますのでご注意ください。その例をいくつか紹介します。
① 保守点検や清掃が定められた基準通りに行っていないことを指摘され、都道府県知事に改善措置や使用亭を命ぜられたのにかかわらず放置➡6カ月以下の懲役、または100万円以下の罰金
② 設置後等の水質検査および定期検査に関して都道府県知事の命令に従わない➡30万円以下の過料
③ 浄化槽の使用を廃止したときの都道府県知事への届け出をしない、うその届け出をした➡5万円以下の過料

自宅が浄化槽を使っているかどうかの見分け方

 このコラムを読んでいる方のなかには、「我が家は浄化槽を使っているのだろうか?」と心配になっている方がいらっしゃるのではないでしょうか。ご自分で建てた家ならば把握していますが、何代か続いている家や相続などで途中から移り住んだ家の場合は、知らない方もいらっしゃいます。その際の確認の方法について説明します。

① 浄化槽の場合は庭や駐車場に2~3枚のマンホールの蓋があります

 浄化槽にはその種類によって、2~3個のマンホールがあって蓋が付いている。単独浄化槽なら2枚、合併浄化槽なら3枚。2~3枚のマンホールの蓋がそれぞれ近いところにまとまってある場合は、浄化槽のものと考えられる。
② 下水道と浄化槽のマンホールの見分け方
 下水道の蓋は、各市町村のデザインとともに「〇〇下水道」と書かれている。蓋も大きいので、すぐに見分けられる。
③ よくわからない場合には
 それでもよくわからない場合は、浄化槽専門業者やハウスメーカーの営業担当者などに相談を。
 もちろん、マトイでもそういった相談に対応していますので、お気軽にお問い合わせください。
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浄化槽の撤去方法と費用の目安

 使わなくなった浄化槽は決められた方法で撤去します。しかし、把握されている浄化槽のほかに、家屋の解体によって浄化槽が見つかる場合もあります。その際も、居住者の責任において撤去しなければなりません。

浄化槽の撤去方法

 浄化槽の撤去方法には、「全撤去」「埋め戻し」「埋め殺し」の3つの方法があります。それぞれの特徴について説明しましょう。
① 全撤去
 浄化槽本体のほか、槽内の部材や装置などすべて含めて解体・撤去し、地中になにも埋まっていない状態にする。そのため、費用は3つの方法のなかで最もかさむが、衛生面やその他の土地の利便性や法的な面において一番安心できる方法で、最も推奨されている浄化槽の処分方法。

② 埋め戻し
 浄化槽の部材や装置を取り除き、浄化槽本体を2/3ほど残して地中に埋めてしまう方法。全撤去に比べると費用は少なくて済むので、価格を抑えたいときに業者からこの方法を提案されることがある。しかし、土地の売却や、古家付き土地として売る際に、浄化槽の一部が残っていると売却価格が低くなる場合がある。また、売却してから、一部分でも浄化槽が残っていることがわかるとトラブルに発展する場合があるので、はじめから全撤去しておいた方が無難。
③ 埋め殺し
 埋め殺しとは「砂埋め処分」ともいい、浄化槽内の汚水を取り除いた後、部材や装置はそのままの状態で埋設する方法。埋め戻しよりもさらに簡単で安価な工事だが、埋め戻しと同じように後々、トラブルに発展するリスクがとても高く、お勧めできない方法。

浄化槽を撤去する際の注意点

 浄化槽を撤去する際には、適切な処理を行うことが大切です。それは、すでに述べている「浄化槽内の最終清掃と消毒作業」を専門業者に依頼して行うこと、そして撤去後には「浄化槽廃止届出書の提出」を行うことです。
 しかし、ときには自分たちがその存在をまったく知らなかった浄化槽が出現することがあります。例えば、相続した家を解体した際、古家付き土地で購入した古家を解体した際などに起こりがちです。突然、解体・撤去が必要となって慌てることと思います。が、そこは冷静になって前述の2点の段取りを進めるようにしましょう。
 撤去費用については、相続した土地であれば必要経費とし、古家付き土地として購入した物件である場合は、仲介した不動産業者や売主と費用負担について話し合いましょう。

浄化槽を撤去する費用の目安

 浄化槽を撤去するためにかかる費用は5人槽から7人槽でおよそ3万円以上かかります。この金額は、現場周辺の立地条件、浄化槽の種類・大きさなどによって変わってきます。
 また、浄化槽の撤去に際しては撤去前に最終清掃と消毒作業が必要になります。これには3万円前後の費用がかかります。具体的な金額は見積りを取ってみないとわかりませんが、清掃・消毒、そして撤去費用を合わせてまずは10万円ほど予定しておくといいでしょう。
 なお、現在の浄化槽はFRRプラスチック製がほとんどですが、まれにRC鉄筋コンクリートの場合があります。そうなると撤去が大変になり、費用はFRRの倍近くになります。これについては多くの場合、実際に業者に現地を確認してもらわないとわかりません。
 また、解体途中で浄化槽が見つかった場合は、追加料金が発生することになります。マトイではその点についても事前に説明させていただいていますが、施主様側も追加料金等について事前に確認しておくことをお勧めします。

浄化槽の撤去費用の目安(5~7人槽の場合)

撤去前の最終清掃・消毒 約3万円
撤去費用 約3万円~

 

浄化槽撤去の費用負担を軽くするために

 浄化槽を撤去する場合は、家屋を解体処分するとき、下水道設備に切り替えるとき、浄化槽を交換するとき、などがあります。いずれにしてもまとまった額の費用が必要になりますので、できるだけ経済的負担を減らしたいものです。そのためのポイントが2つあります。

補助金の利用

 自治体によって単独処理浄化槽の撤去や、合弁浄化槽の設置に対して補助金交付の制度があります。制度の有無や対象条件、補助金額、申請方法などが異なりますが、まずは市町村窓口に問い合わせて確認することをお勧めします。

日ごろからの正しいメンテナンス

 前述のように、浄化槽の撤去では撤去前の清掃と消毒がとても重要です。例えば、拭き掃除をあまりしてこなかった窓ガラスの汚れを取るのは、とても大変です。でも、日ごろからきれいに掃除をしている窓ガラスは、急に掃除が必要になったとしても簡単に汚れを落とすことができます。浄化槽も同じです。法律で定められたように定期的に清掃等を行っている場合は汚れも比較的取りやすいのですが、そうでない場合は時間も費用もかかります。撤去に際しても、日ごろのからの正しいメンテナンスが重要となります。

まとめ

 日本の下水道の普及率は2020年の時点で100%に達していません。そのため、し尿や生活排水をきれいにして放水する浄化槽は、下水道が整備されていない地域の人たちの生活にとっては、まだまだ大切な設備です。同時に、現在下水道に切り替わっている地域でも、以前に利用していた浄化槽が敷地内に埋められたままになっていることがたくさんあります。そのため、浄化槽や浄化槽撤去に対する知識は、おさえておく必要があるものです。
 今回の情報が、今後、家屋の解体や下水道への切り替えを迎える際に、お役に立てば幸いです。また、実際にそのときを迎え、わからないことなどがあった際は、どうぞマトイにお声掛けください。マトイでも浄化槽の撤去は多く手掛けておりますので、さまざまな経験をもとに対応させていただきます。
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記事の監修

株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)

株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
どんな些細なことでも丁寧にお答えいたします。お気軽にお問い合せください。

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