こころに留めておきたい「空家対策特別措置法」
かいたいコラム テレビなどで「ゴミ屋敷」とか、「空き家から出火した」などといった情報を耳にすることがあります。
他人事のようでもありますが、少し周辺に視線を巡らせると「気が付いたらあそこのお家はもう何年も人の気配がない」、「庭も玄関先までもがいつもゴミだらけ。住んでいる人はいるの?」という家があるかもしれません。
空き家問題は、案外身近なものです。
身近にあるかもしれない「空き家」
「空き家」といってもさまざま
一般的に「空き家」というと、単に「人が住まなくなった家」と思います。しかし、そのありようはさまざまです。
住む人がいなくて荒れ果てた家、きちんと管理が行き届いているけれど、住む人がいない家、人が暮らしている気配は感じられないけれど、時々人の出入りが見られる家、等々。
知人のAさんは3人きょうだいの長女で、住まいから100㎞ほど離れたところに実家があります。3人とも独立して実家を離れ、母が亡くなって老いて衰弱したお父様は施設に入所されました。そして実家に住む人は誰もいなくなりました。
しかし、近所に住んでいる叔父・叔母にあたる親戚の人々が、ときどき庭の掃除をしてくれ、きょうだいが1か月交代で実家を訪れて家の空気の入れ替えや掃除をしています。
また、親族同士の仲が良く、年に2~3回はその家にみんなが集まってバーベキューや宴会を楽しんでいるそうです。空き家となってしまったものの、実家は一族をつなぐ場所になっているのです。
所有者が抱える憂うつ
ところがある時、Aさんはさえない表情で次のようなことを話し出しました。
ふだんは母屋の掃除や空気の入れ替えだけをしているのだけど、たまたま必要になった物を取りに庭の奥にある倉庫に行きました。すると、中は荒れ放題。植木職人だったお父様は仕事道具の手入れはもちろんのこと、物の整理整頓はきっちり行っていました。常に置き場所は決まっていたので、「あれを使おう」と何かを取りに行って見つからないことはほとんどないほどに整理されていました。それが 何ということでしょう。奥にしまわれていた物さえも通路に放り出され、焚火の跡もあったそうです。
Aさん「きっと普段は誰もいないと知っていた他人が入り込んで、あさっていたのかもしれない。なによりも焚火の跡があったのにはぞっとしたわ。もし火事になっていたら…と思うと、生きた心地がしなかったの」と暗い表情で語っていました。
さらに、Aさん「今は叔父たちが家の維持に協力してくれているけれど、もっと年取ってきたら庭を掃除したり、植木に水をやったりできなくなると思うの。防犯のことや父に何かあった時のことを考えて、実家の処分について今から真剣に考えなくては…。子どもたちにこの問題を背負わせたくないし」と言葉をつなげました。
親戚の方々の協力を得ながら守り、親族の楽しい集いの場となっている実家も、所有者にとっては憂うつの種でもあったのでした。
そして、マトイのもとに寄せられる相談の中にも、こういった思いを垣間見ることは多くあります。それだけ空き家に問題を抱えている人はたくさんいるのです。
知っておきたい「空家等対策特別措置法」について
空き家が抱えるいろいろなリスク
折々に人の出入りがある空き家でも、関係者以外の人が立ち入った痕跡が見つかるのは怖いことです。そして空き家には以下のようにさまざまなリスクがあります。
① 建物などが倒壊して、周辺に迷惑・危害を及ぼす。
② 適切に手入れがされずに傷んだ屋根や外壁がはがれて飛散して迷惑をかける。
③ 老朽化した門や門扉、手入れされないままの庭木などが倒壊して迷惑をかける。
④ 浄化槽が壊れたり、下水管が詰まったりして衛生上の迷惑をかける。
⑤ ゴミなどを不法投棄されやすい。
⑥ 放火や犯罪者の隠れ家などになりやすい。
⑦ 周囲の景観に悪影響を与える。
こういったリスクは複数が関係し合っていくつもの問題が生まれます。そして空き家として放置される期間が長ければ長くなるほど、そこから起こりうる危険度は増します。
近年、空き家が増え続けている
実は近年空き家が増えて、一つの社会問題になっています。
空き家は「二次的住宅」と呼ばれるもの、「賃貸用または売却用の住宅」、「その他の住宅」の3種類に分けられます。
二次的住宅とは、別荘のようにたまに寝泊まりする人がいる住宅です。
賃貸用または売却用の住宅とは、新築・中古の関係なく、賃貸や売却のために空き家になっている住宅をいいます。
そして「その他の住宅」とは、二次的住宅や賃貸や売却用の住宅以外の住宅を指します。例えば、居住者が転勤や入院などのために長期間にわたって不在となり、もうそこに住む予定がなくなっている住宅などです。
問題となっているのは、この「その他の住宅」です。
総務省の統計調査(平成30年 住宅・土地統計調査)によると空き家の総数は1,998年から2,018年の20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加しました。その中で「その他の住宅は約1.9倍(182万戸→349万戸)になって、その他の住宅の空き家率が高くなっていることがわかります。
背景には歯止めがかからない少子化と、高齢化社会という現状があります。
「知っている」と「知らない」で大きな違いが出る「空家等対策特別措置法」
適切に管理がされない空き家が増えて、地域社会やそこで暮らす人たちの生活に深刻な影響を与えています。そこで政府は、2015年に「空家等対策特別措置法」(正式名称 空家等対策の推進に関する特別措置法)を制定しました。
まず国が空き家等に関する施策の基本方針を策定し、それに基づいた都道府県の助言に則って市町村が空き家対策やその対応のために必要なネットワークを組んで、さまざまな活動を行っていきます。こういった取り組みによって空き家を適切に管理し、地域住民の生命・健康・財産を保護するとともに生活環境を守り、空き家などを有効活用できるようにしていこうとするものです。
これによって市区町村は次のことを行います。
① 危険な空き家の実態調査を行う。
② 所有者に対して空き家を適切に管理するための指導を行う。
③ 適切に管理されていない空き家を「特定空家」に指定して行政措置の対象とする。
④ 特定空家に対して助言・指導・勧告・命令を行う。
⑤ 特定空家に対して罰金や行政代行を執行する。
⑥ 空き家跡地の活用促進を図る。
なお、この法律でいっている「空家」とは、「建築物またはこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」としています。常態とは長期間にわたって使用されていないという意味です。要するに、年間を通して人の出入りがなく、水道やガス・電気も含めてその建物が使われた形跡がない、ということです。
この定義でいえば、Aさんの実家の場合は空き家とはいえません。しかし、Aさん自身が不安を感じているように、先々、そうなる可能性は大いにあります。
この法律には税制上の措置などもあり、空き家をもっている人、将来家を相続する予定のある人は、是非、知っておきたい法律です。
将来を見据えた空き家の活かし方
行政措置の対象となる「特定空家」とは
「空家等対策特別措置法」に基づいた調査で、特に問題とされる空き家は「特定空家」に指定されます。
特定空家に指定される条件とそのポイントは次の通りです。
①そのまま放置すれば倒壊して著しく危険となる恐れがある状態。
メインとなる建物だけでなく、門扉や柵、ベランダ柵、庭木や庭石、屋根や外壁などが倒壊したり剥がれてよそに飛び散ったりしないかを確認します。その部分だけでなく、建物の基礎部分に亀裂や変形がないかなども調べて判断します。
② 著しく衛生上有害となる恐れのある状態。
浄化槽や排水管の破損によって汚水がたまり、そこに悪臭や虫が発生したり、建物の破損によってアスベストなどの健康を害する建築材料が露出・流出するなどして不衛生で健康を害するような状態になっていないか確認します。
③ 適切な管理が行われていないために、著しく周囲の景観を損なっている状態。
建物を覆いかぶされるほど庭木が茂っている、塀の落書きや建物が外見上でも汚れたり傷んだりしたまま、敷地内にゴミが散乱したまま、といった状態。こうなるとゴミの不法投棄や建物への落書きやいたずらなどでさらなる損壊を招きます。
④ その他、周辺環境に悪影響を及ぼす状態。
シロアリや蚊などの害虫の発生、動物が住み着くことによる鳴き声や臭気の問題、不審者の出入りなど、近隣住民のトラブルの原因となります。
「特定空家等」指定の流れとデメリット
市区町村は、突然に特定空家の指定をするわけではありません。事前に適切な管理が行われていない所有者に書面での事情把握を行うとともに、現地での立ち入り調査などを行います。そのうえで、特定空家としての条件がそろっていると認めた場合に、その指定を行います。
特定空家等に指定されると、「助言・指導」「勧告」「命令」「代執行」といった措置が段階的に行われます。
「助言・指導」では、修繕補修やごみの撤去など、適正に空き家を管理するためのアドバイスや指導が行われます。この段階で指導に従って改善すれば、特定空家等の指定は取り消されます。
しかし従わない場合は、書面による「勧告」がなされます。これに従わないと特定空家として、固定資産税等の住宅用地特例から除外されてしまいます。住宅用地特例では、家屋があれば土地の固定資産税は更地の場合よりも最大6分の1に優遇されます。しかし、特定空家に指定されたことで特例は適用されず、固定資産税は指定以前の数倍に跳ね上がり、それまでより高額な税金を支払うことになります。これは所有者にとって大きな不利益です。
勧告にも従わない場合は、強制力が強くなる「命令」が出されます。命令にも従わないでいると行政処分として「50万円以下の過料」を支払うことになります。
命令が出てもなお従わない場合には、最終的に「代執行」として行政が所有者に代わって強制的に解体や撤去を行います。この費用はどんなに高額であっても所有者に請求され、支払うまで請求され続けます。
それぞれに合った空き家の活かし方を
所有者にとって空き家の存在は経済的・精神的負担がかかる頭の痛い問題ですが、前向きに「空き家」の活かし方を考えていくことが大切です。なぜなら人が住まなくなった建物は想像以上に傷みが早く、住まない期間が長くなればなるほど修繕費用はかさんで、所有者の負担は高まるからです。
空き家の活かし方として、賃貸物件として活用していく方法と売却する方法があります。
賃貸物件として活用する場合は、修繕すべきところをきちんと修繕することが前提となります。そのうえで個人向けの賃貸住宅や社宅として企業に借り上げてもらう等のほか、ゲストハウスやシェアハウス等を経営するという活用方法もあります。
しかし、あまりにも空き家の老朽化がひどく修繕費に莫大な費用がかかるような場合は、建物を解体して更地にして土地活用を考えてもいいと思います。その土地柄によっては、解体してきれいな更地にすることで資産価値がぐっと上がることもあります。
いずれにしても増える一方の負担を考えると、できるだけ早く空き家になった家や土地の活用を決めたいところです。しかし、思い出の詰まった建物はそう簡単に処分できるものではなく、所有者の方の想いや生活環境、先々のライフプランなどと併せてじっくり考えることも大切です。
そんなときこそ、株式会社マトイにご相談ください。マトイのお客様に古いお宅を高額で購入される方もいらっしゃいますので、プラスになる方法もあるかもしれません。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
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