家を解体する際の廃棄物はどうする? 正しい処理法や安くする方法は?
かいたいコラム 実は、解体費用の半分近くは、廃棄物の処分費用であることをご存じでしょうか?
それぞれ出たゴミを種類別に分類して、処理場に搬送しなくてはなりません。できればゴミは費用負担の面からも減らしたいものですが、それまでに建っていた家1軒を壊すのですから、単純に考えても簡単に減らせるものではありません。しかし、家のなかにある残置物と呼ばれるものをいかに減らすかによって、処分量や処分費用を抑えることができます。
まずは廃棄物処理の理解を深め、正しく処分するために、今回は廃棄物の処理に関する制度やそれに基づいてどのような廃棄方法が行われるかを説明します。
家のなかにある廃棄物、解体現場になると産業廃棄物に
家を解体するには、たくさんの廃棄物が出ます。瓦などの屋根材、木材、壁紙などの紙ゴミ、石膏ボードやコンクリートなどなど、それらを種類別に処分場にもっていきます。
私たちの日常生活においても、いろいろなゴミが出ます。しかし、それらは定期的に回ってくる自治体のごみ回収によって無料で処理できるものがほとんどです。もちろん、粗大ゴミや家電製品などは有料となるものもありますが、毎日、有料となるゴミを出すわけではないので、解体工事における廃棄物処理に多額の費用がかかる、ということはなかなか理解しにくいかもしれませんね。
そこで、廃棄物およびその処分について知ることが必要です。まず一般廃棄物と産業廃棄物の違いについて知っておきましょう。
私たちが生活しているなかで発生するゴミは、ほとんどが「一般廃棄物」という扱いになります。内容は「可燃ゴミ」とか「資源ゴミ」というように、その内容によっていくつかに分類されています。
一方、さまざまな事業活動のなかで発生するゴミは「産業廃棄物」となります。身近なところで、近所の飲食店や理美容店などを例に挙げてみましょう。個人営業の小さなお店であっても、お店から出たゴミは「事業系廃棄物」という扱いになり、「事業系一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分けられ、いずれもゴミ回収時に家庭ゴミと一緒には出せません。専門のゴミ回収業者に任せるか、自分で廃棄処分場に持ち込むなどして処分することになります。
同様に、解体工事で発生するさまざまな廃棄物も、専用の処理場に持ち込んで処理するようになります。このときに注意が必要なのが、解体工事が始まるまで家のなかにあるものです。解体工事前では一般廃棄物の扱いですが、解体工事が始まってそこが「工事現場」になると、「もういらないから」とそこに置いたままになったものは他の廃棄物と同じように産業廃棄物の扱いになってしまいます。例えば、使わなくなったお皿は、解体工事前に廃棄すれば一般廃棄物として無料で不燃ゴミ回収日に出すことができます。が、解体工事が始まると産業廃棄物として有料になり、廃棄物処分費用全体に影響を与えかねないのです。
このことをしっかり理解したうえで、解体工事前の残置物の処理・処分を行うことが必要です。
環境を守りながら廃棄物処理を進めるためのさまざまな法律とそのポイント
解体工事現場をはじめ、あらゆる事業現場から発生する廃棄物の処分方法は法律によって決められています。さらに具体的な処理方法などを定める関連する法律や制度などもあり、一般市民としても解体工事の施主となった場合にも、これらのポイントを理解しておくと廃棄物を処分する際に役立ちます。
廃棄物処理法(廃掃法)
この法律は廃棄物の発生を抑えること、廃棄物を正しく処理すること、生活環境を清潔に保って公衆衛生の向上を図ること、を目的としたものです。この法理に基づいて廃棄物の処理は、正しく分別、保管、収集、運搬、再生、そして処分する、といったことが定められています。
この法律は正式には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といいます。伝染病の蔓延防止のために1900年に制定された法律を基に作られ、その時どきの環境やゴミ問題などに合わせて適宜改正が行われ、新たな制度が導入されています。そして、次のような行為に対して重い罰則が科せられるようになっています。
① 廃棄物の不法投棄
排出事業者および違法行為を行ったものに、5年以下の懲役または1千万円以下の罰金(法人においては3億円以下の罰金)もしくはその両方が科せられる。
② マニフェスト(この後に説明するマニフェスト制度に関するもの)を不交付または虚偽等
排出事業者および処理業者に1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる。
③ 契約書未作成のままで廃棄物処理
排出事業者および処理業者に、3年以下の懲役または300万円以下の罰金もしくはその両方が科せられる。
④ 無許可業者へ委託処理
排出事業者、無許可営業をしていた業者、および処理業者にも、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金もしくはその両方が科せられる。
⑤ 特別管理産業廃棄物管理責任設置義務違反
特別管理産業廃棄物とは、産業廃棄物のうち揮発性、毒性、感染性およびその他の人の健康や生活環境において被害を生じる恐れがある性状を有するものをいう。排出事業者に、30万円以下の罰金が科せられる。
こちらのコラムでも廃棄物処理法に基づいた廃材の処理について説明していますので、ご参考になさってください。
マニフェスト制度
産業廃棄物を排出する事業者(解体工事であればそれを請け負った解体業者)は、排出された産業廃棄物が最終処分まで正しく処理されたかどうかを確認する義務があります。それを確認するための制度が、マニフェスト制度です。
排出事業者は産業廃棄物が契約内容通りに処理されたかを確認するために伝票を発行します。これをマニフェスト(産業廃棄物管理票)といい、これには複写式の紙伝票と電子マニフェストがあります。
処理を請け負った収集運搬業者は運搬が終了したら、処分業者は処分が終了したら排出事業者にマニフェストに必要事項を記入・入力して提出し、それぞれの業務の終了と廃棄物が適正に処理されたことを報告します。この報告は下記のように定められていて、決められた期間内に処理終了の報告がないときは、処理状況を把握して適切な措置を講じなくてはなりません。また都道府県・政令都市に報告する必要があります。
なお、運搬終了および処理終了の確認期限は次の通りです。
① 運搬終了・処分終了の確認期限のチェック……90日、特管60日以内
② 最終処分終了報告の確認期限のチェック……180日以内
家電リサイクル法
正式には特定家庭用機器再商品化法といい、家電4品目と呼ばれる、「エアコン」、「テレビ」(ブラウン管、液晶・プラズマ)、「冷蔵庫・冷凍庫」、「洗濯機・衣類乾燥機」を対象品としています。使わなくなった場合、すぐに廃棄してしまうのではなく、分解して有用な部品や材料をリサイクルし、廃棄物を減らすとともに資源の有効利用を進めることを目的としています。
小型家電リサイクル法
正式名称は、「使用済み小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」といいます。この法律によって、上記の家電4品目以外の使用済み家電の多くの再資源化の促進を目的として回収し、分解・粉砕して素材の種類ごとに選別、有害物質の処理を行って貴重な金属資源としてリサイクルします。
資源有効利用促進法
これは「リデュース:廃棄物の発生抑制」「リユース:再使用」「リサイクル:再資源化」の3Rを促進することを目的とした法律で、各製品に関わる人たちに次のことを責務として求めています。この法律によって3Rを義務付けている製品には10業種69品目あります。なかでも私たち消費者側として理解し、処分に留意すべき身近なものとしては、
① 紙類、スチール缶、アルミ缶、ペットボトル、プラスチック製品等の分別
② 前項でも取り上げた4品目をはじめとした家電製品の処分、
③ パソコンの処分、等があります。
廃棄物を処理するうえでのそれぞれの義務
ここまでの説明で、それぞれ適切に使用することはもちろん、捨てる際も分別して廃棄することによって、まだまだ使えるものや素材等を活かすべきであると法律によって定められていることがわかると思います。また、それぞれの活動において、それらの製品を利用する消費者、生産する事業者、それらの処分及び監督にあたる自治体や国の義務があることに気づかれたのではないでしょうか。
① 消費者
製品を長期間にわたって使用することを心がける。廃棄する場合は再利用・再資源・再生部品の利用の促進につながるように、分別回収や販売店を通じた取引など、国や地方公共団体、事業者が実施する3Rの活動に協力する。
② 事業者
消費者が使い捨てしないような良質な製品をつくることを心がける。また、原材料の使用の合理化を図り、再生資源や再生部品を利用し、使用済み物品や副産物の再資源・再生部品としての利用の促進に努める。
③ 地方公共団体
それぞれの地域社会の経済的・社会的な諸条件に応じて、資源の有効な利用を促進するように努める。
④ 国
教育活動や広報活動によって資源の有効な利用の促進に関する国民の理解を深め、その実施について国民の協力を求めるように努める。
解体工事において施主様が廃棄物処理で心がけること
解体の工事現場には、さまざまな種類の産業廃棄物が出ます。それに加えて施主様が処理しきれなかった残置物も加わると、産業廃棄物の量はさらに増えてきます。その状況は単に施主様が負担する解体費用が増えるだけではなく、現場の負担が増え、さらに処理場の負担も増えるということになっていきます。
そこで、施主様の立場では次のことを心がけると、施主様の経済的負担・現場の負担・社会環境の負担軽減につながります。同時に、解体工事で発生する廃棄物には、解体工事業者のみならず、廃棄物の管理や運搬に関しては施主様にも責任があります。この点を十分に承知したうえで、次のようなことを心掛けて正しく処分することが大切です。
① 残置物を残さない。
② 残置物で使えるものは、再利用してもらえるような形で処分する。
③ 電化製品や布類・紙類といったリサイクルできるものは、正しく分別して廃棄する。
④ 残置物を廃棄物として業者に処分を依頼する際は、法律を遵守して正しく処分する業者を選ぶ。
解体工事では、残置物の処分のほかに施主様が行うことはいろいろあります。こちらのコラムに、それらについて説明していますので、ご一読ください。
解体業者が廃棄物処理で心がけること
解体工事現場で発生した廃棄物は、施主様から工事の依頼を受けた業者の責任において、正しく収集し、処分場まで運搬し、処分することになっています。
さらに現場でのがれきやコンクリート片など解体による廃棄物は、できるだけ速やかに処分場に運搬することが大切です。いつまでも現場に置いておくと、そこから発生する粉塵などもあり、近隣からのクレームやトラブルなどの原因になりかねません。そのため、多くの解体業者は解体作業を行いながら、分別を行って処分しやすくしています。
しかし、産業廃棄物を運搬するには、「産業廃棄物収集運搬許可証」といった許可が必要です。マトイは解体工事業の許可とともにこの許可も得ているので、解体工事から廃棄物の処分までを自分たちで責任をもつべき一連の作業として認識しています。が、産業廃棄物収集運搬許可を得ていない業者は、廃棄物処分のための許可をもつ業者に依頼することになり、現場での廃棄物処理のスムーズさには違いが出てしまいます。現場でのご近所トラブルを回避するためにも、廃棄物処理のことまでを考えた業者選びが大切です。
解体に伴う廃棄物の正しい処理方法
解体工事で廃棄物を正しく処理することは、解体工事と同じレベルでとても重要なことです。さまざまある廃棄物を正しく処理しようと私たち業者は、常に心がけています。
廃棄物を処理する際の注意点
解体工事現場で発生する廃棄物には、下の表にある産業廃棄物とそれ以外の一般廃棄物があります。残置物の家具などの木製品やスチール製の机などは現場の産業廃棄物と一緒に処理できますが、それ以外の廃棄物は一般廃棄物として処分します。
このように廃棄物の処理で注意すべきことは
① 廃棄物をしっかりと分類する。
② 廃棄物それぞれの種類に応じて、正しく処理を進める。
産業廃棄物の処理方法
産業廃棄物として指定されているものは、表にある20品目です。事業活動のなかで排出される産業廃棄物は、一般家庭などから排出される廃棄物よりも量が大量であること、粉塵などが飛散する可能性があること等から、保管や収集運搬、処理は資格や許可を得た人・業者が行うように決められ、マニフェストに沿ってそれらの流れが管理されます。
なお、産業廃棄物の処理責任の監督は都道府県が行い、産業廃棄物を運搬および処理するためには「産業廃棄物収集運搬業」「産業廃棄物処分業」「特別管理産業廃棄物収集運搬業」「特別管理産業廃棄物処分業」などの許認可を取得した業者が行います。
表 産業廃棄物として指定される20品目
燃 え 殻 | 瓦 礫 類 |
汚 泥 | ばいじん |
廃 油 | 紙 屑 |
廃 酸 | 木 屑 |
廃アルカリ | 繊 維 屑 |
廃プラスチック | 動植物性残渣 |
ゴ ム 屑 | 動物系固形不要物 |
金 属 屑 | 動物の糞尿 |
ガラス・コンクリート・陶器 | 動物の死体 |
鉱 さ い | これら産業廃棄物をを処分するために処理したもの(コンクリート固形化物等) |
電化製品の処分方法
電化製品の処分方法は、家電4品目といわれる大型家電(テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機など)は家電リサイクル法により、それ以外の小型家電は小型家電リサイクル法によって決められています。
まず、家電4品目は買い替えを行う場合と処分のみを行う場合と、それぞれ次のように決められています。
① 同品目の商品を新しいものに買い替える場合
新しい商品を購入する店で、引き取りを依頼する。
② 処分だけをしてもらう場合
・商品を買った店がわかっている場合は、引き取りを店に依頼する。店ごとに、引き取り方法が異なるため、事前に問い合わせをしておくことが必要。
・購入した店がわからない場合は、自治体のホームページ等で方法を確認。
・郵便局振り込み方式で料金を支払い、指定取引場所に直接持ち込む方法もある。
事前に店舗や回収業者に連絡を入れると、指定された回収日時に回収業が訪問。業者から「家電リサイクル券」が提出されるので、それに必要事項を記入します(店で依頼した場合、依頼時、店舗で必要事項を記入する場合もある)。家電を回収した際、家電リサイクル券の控え権を回収業者から渡されます。そこに記載されている内容に沿って、店や家電リサイクル券センターのホームページでリサイクル状況を確認できます。
また、小型家電の回収方法としては次のようなものがあって、廃棄する場合はこれらを利用するようにします。
① ピックアップ回収
従来のゴミ回収を利用し、「不燃ゴミ」の日に廃棄。
② ボックス回収
公共施設、家電小売店、ホームセンター等に設置されている専用の回収ボックスに投入。
③ ステーション回収
自治体によるステーション(ゴミ排出場所)ごとの資源物回収に設けられた「使用済み小型電子機器」に該当する場に廃棄。
④ イベント回収
地域のイベント時にその場に設置された回収ボックスや対面回収等を利用。
パソコン等電子機器類の処理方法
使用済みのパソコンは、資源有効利用促進法によってメーカーによる回収とリサイクルをしてもらうことができます。そのため廃棄の際は、メーカーのカスタマーセンターなどに問い合わせることで具体的な方法を知ることができます。なお、回収されたパソコンは再資源化施設においてデータ破壊や分解等の工程を経て再資源化され、樹脂や金属などの素材として再利用されます。
解体に伴う廃棄物処分費用を安く抑える方法
「自分たちで処分するのは大変だから……」と、家具や食器などを現場に置いたまま解体時の廃棄物と一緒に処分することは可能です。しかし、それをすると廃棄物の量が増え、一般ごみよりも高い処理費用がかかってしまいます。全体の費用をできるだけ安くしたいと思うのであれば、次のようなことを行ってみましょう。
① 廃棄前に、自分たちが引き続き利用したいもの、取っておきたいものを別にしておく。
② 友人や親せきの方々に声をかけ、欲しいものをもって行ってもらう。
③ まだ使えそうなもの、興味をもちそうなものはリサイクルショップやフリマアプリなどを利用して、売却する。
④ 不用品を外に陳列して、欲しい人に持ち帰ってもらう。
⑤ 地域のゴミ回収日に廃棄する。
⑥ 大きなもの(最も大きな一辺の長さが30㎝以上のもの)は粗大ゴミとして処分する。これは有料になるものの、産業廃棄物として処分するよりも安く済む。
粗大ゴミとなるものが多かったり、施主様のご都合で時間の確保が難しかったりする場合は、不用品回収業者を利用する選択もあり。マトイでは解体をお受けした施主様の不用品回収についてのご相談にも積極的に対応しています。
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⑦ 木製品やスチール製品などの金属類は解体時に発生する同じ種類の廃棄物と一緒に廃棄できるので、そのままにしておくことができる。
なお、こちらのコラムでも残置物処分について記載していますので、ごらんください。
まとめ
家を解体する場合、施主様にとって大きな負担になることは家屋内にあるものの処分ではないでしょうか。もちろん費用をかければ、すべて業者に任せることはできます。でも、そうだとしても思い出深いもの、価値のあるもの、などがあって、100%業者任せにはできません。それらの品々を処分する・しない、を判断するのも大変なことです。
今回は廃棄物処理について、関係する法律やそれに伴っての正しい処理方法などについて説明を進めました。それぞれの品物の種類によって廃棄する方法が異なります。
そこで残置物の処分について少し考えを変えてみてはいかがでしょうか。時間はかかるかもしれませんが、家のなかにある1つ1つのものと向き合いながら、それぞれに合った処分方法で処分を進めていってみては? とはいえ、それぞれに多忙な日々を暮らしているなかで、できない方もいらっしゃるでしょう。解体を通して、そこで暮らしを共にしてきた品々をどのように処分していくべきか、そういったことの段階からマトイは皆様のご相談に応じ、施主様のご都合や今の暮らしへのご負担をできるだけ少なくしながら工事を進めるお手伝いをしています。どうぞ、お気軽にお声をかけてください。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
どんな些細なことでも丁寧にお答えいたします。お気軽にお問い合せください。
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