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近隣への影響を抑え、関係性を保つ、解体工事の時間配慮

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 解体工事でどうしても起こってしまう騒音や振動。工事現場の近隣で暮らす方々にはご迷惑をできるだけ少なくするように、私たち業者は可能な限りの配慮を行っています。また、私たち業者と同様に、もしくはそれ以上に、施主様は近隣の方たちに及ぼす工事の影響を心配しているのです。
 解体工事は、工事現場周辺で暮らす方々への影響を配慮して、工事時間など一定の規定のもとで解体工事は行われています。今回は、それらについて説明します。

知っておきたい、騒音と振動を起こす解体時の特定建設作業

 どのような工事でも、多くの場合ある程度の騒音や振動は起こります。しかし、なかでも周囲に与える影響が大きい作業があります。

特定建設作業とは

 解体工事における作業のすべてが大きな騒音や振動を引き起こしているというわけではありません。工事作業のなかでも、とくに著しい騒音や振動を発し、現場周辺で暮らす人たちへの影響も大きいものがあります。そういった作業は「特定建設作業」として、一定の規制に沿って行うことが義務付けられています。

特定建設作業の具体例

 特定建設作業は「騒音規制法」および「振動規制法」の2つの面から、その作業内容が指定されています。また、自治体によって制定している条例に基づいて指定建設作業を定めているケースがあります。ここでは、東京都における指定建設作業をご紹介します。

【騒音規制法による特定建設作業】
① 杭打ち機や杭抜き機、または杭打ち杭抜き機を使用する作業。
② びょう打ち機を使用する作業。
③ 削岩機を使用する作業。
④ 空気圧縮機を使用する作業。
⑤ コンクリートプラント、またはアスファルトプラントを設けて行う作業。
⑥ バックホウを使用する作業。
⑦ トラクターショベルを使用する作業。
⑧ ブルドーザーを使用する作業。

【振動規制法による特定建設作業】
① 杭打ち機や杭抜き機、または杭打ち杭抜き機を使用する作業。
② 鋼球を使用して建築物、その他の工作物を破壊する作業。
③ 舗装版破砕機を使用する作業。
④ ブレーカーを使用する作業。

【東京都の環境確保条例による指定建設作業】
① 杭打ち機、杭抜き機もしくは杭打ち杭抜き機を使用する作業、または穿孔機を使用する杭打設作業。
② 鋲打機またはインパクトレンチを使用する打設作業。
③ 削岩機またはコンクリートカッターを使用する作業。
④ ブルドーザー、パワーショベル、バックホウその他、これらに類する掘削機械を使用する作業。
⑤ 空気圧縮機を使用する作業。
⑥ 振動ローラー、タイヤローラー、振動プレート、振動ランマ、その他これらに類する締固め機械を使用する作業。
⑦ コンクリートプラント、アスファルトプラントを設けて行う作業。またはコンクリートミキサー車を使用するコンクリートの搬入作業。
⑧ 原動機を使用するはつり作業およびコンクリート仕上げ作業。
⑨ 動力、火薬、または鋼球を使用して建築物その他の工作物を解体、または破壊する作業。

 特定建設工事や指定建設作業として挙げられているものをみると、さまざまな重機が用いられています。これらをまったく使用しないで解体工事を行うことは、無理といっても過言ではありません。そのために、使用する重機や部品を使い分けるなどして、騒音や振動を低減するための工夫を行っています。
 こちらのコラムでは解体工事で使用する重機や騒音や振動の対策等について取り上げています。どうぞご一読ください。

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解体で使用する重機はどんなもの? 安全対策、音の対策についても

解体工事による騒音や振動に関する法律と規制基準

 解体工事は、施主様や業者の都合でいつでもできるわけではありません。近隣に居住する方々の生活に配慮した時間帯や、道路を通行止めにできる時間帯、工事車両が通行できる時間帯や場所など、細かい規制があります。
 その規制の根拠となっているものが前項の特定建設作業で出てきている「騒音規制法」や「振動規制法」、そしてその自治体における条例などです。これらの規制に基づいて工事を行うことで、現場周辺の人たちの暮らしに配慮しながら、工事を進めていきます。

騒音規制法とは

 騒音規制法の目的は、工場などの事業活動や建設工事、および自動車の騒音の許容限度を定めて人々の生活環境を守り、健康を保護することです。
 そのため「工場・事業場の騒音」「建設作業の騒音」「自動車の騒音」を規制の対象として、それぞれに規制する指定地域や規制基準を決めています。解体工事の騒音は建設工事のなかに含まれ、特定建設作業を規制対象として規制基準が定められています。
 なお、特定建設作業を行う場合は、その作業を行う7日前までに市町村長や特別区長に届け出ることが義務付けられています。
 また、規制基準や要請限度を超える騒音で、周辺の生活環境が損なわれていると市町村長や特別区長が認めた場合、改善勧告や改善命令が発動され、それに従わないと罰則を受けることになります。

騒音規制法に基づく騒音と作業時間の規制

 騒音規制法では規制する指定地域を次の2つに分けて、作業できる時間帯や作業期間などを決めています。
*第1号区域:良好な住まい環境を保つために、とくに静穏を保つ必要がある区域等。
*第2号区域:指定地域のうちの第1号区域以外の区域。

騒音規制法で規制される騒音の大きさや作業時間
 

第1号区域 第2号区域
騒音の大きさ 敷地境界で85㏈を超えないこと 左に同じ
作業時間帯 午後7時~午前7時は行わない 午後10時~午前6時は行わない
作業期間 10時間以内/日、連続6日以内 14時間以内/日、連続6日以内
作業日 日曜日、その他の休日でないこと 左に同じ

 

騒音規制法に基づく道路を通行止めにできる時間帯

 騒音規制法によって作業が可能な時間帯が定められています。では、道路を通行止めにできる時間帯についてはどうでしょうか。これも、現場周辺で暮らす人々にとっては、大切なので知っておきたいことです。  道路を通行止めにできる時間帯は、06:30~19:30です。これは、騒音規制法に基づく作業時間に基づいています。しかし、開始がそれよりも30分早く、終了が30分遅くなっています。工事の準備と片付けの時間として前後30分の猶予がつけられています。
 なお、通行止めに関する届け出は、現場における所轄の警察署に提出します。

振動規制法とは

 動規制法は騒音規制法と同じように、事業活動や建設工事作業から発生する著しい振動を規制し、人々の生活環境と健康を保護することを目的としています。対象となる振動は、「工場・事業場からの振動」「建設作業の振動」「道路交通による振動」で、騒音と同様に振動を発する特定建設作業を規制対象として規制基準が定められています。
 なお、こちらも特定建設作業を行う7日前までの届け出が義務付けられているとともに、基準を超えた場合には改善勧告や改善命令、そして行政措置を受けることになります。

振動規制法に基づく振動と作業時間の規定

 振動規制法では規制する指定地域を次の2つに分けて、それぞれに作業できる時間帯や作業期間などを決めています。

*第1号区域:
・良好な住まい環境を保つために、とくに静穏を保つ必要がある区域。
・住居用で、静穏を保つ必要がある区域。
・住居用であるとともに商業・工場用でもある区域で、相当数の住居が集まっているこ
とから、振動の発生を防止する必要がある区域。
・学校、保育所、病院、入院設備を備えた診療所、図書館、および特別養護老人ホーム
の敷地の周囲おおむね80mの区域内。

*第2号区域:
指定地域のうちの第1号区域以外の区域。

振動規制法で規制される騒音の大きさや作業時間

第1号区域 第2号区域
振動の大きさ 敷地境界で75㏈を超えないこと 左に同じ
作業時間帯 午後7時~午前7時は行わない 午後10時~午前6時は行わない
作業期間 10時間以内/日、連続6日以内 14時間以内/日、連続6日以内
作業日 日曜日、その他の休日でないこと 左に同じ

 

法的な時間を守る以外の、騒音・振動の予防と対処法

 前項で説明しているように、騒音や振動に配慮して工事を行うには、法的に規制されている作業時間や作業期間等を守ることが第1です。では、例えば「人が居住していない、商店だけの区域だから夜9時でも工事を続けていても、だれにも迷惑をかけないか?」といえば、そんなことはないでしょう。法的な基準を守っているからといって、現場周辺で生活したり、仕事をしたりしている人たちへの配慮が不要なわけではありません。
 法的な規制を守るとともに、現場付近で仕事をしていたり、暮らしていたりする人たちへの配慮は大切です。そこで、どのような配慮が必要であるかについて説明します。

① 近隣への挨拶
 挨拶回りは、近隣の方々に工事に対して理解していただき、工事を円滑に進めていくために欠かせないものです。業者だけで、もしくは施主様だけで回る、逆に業者だけで回るかは、施主様の考えや施主様と近隣の方々とのお付き合いの程度などにもよります。どのような形で挨拶回りをするかは、施主様と業者とで話し合って決めてください。
 なお、挨拶回りについては、こちらのコラムで詳しく説明しています。参考にご覧ください。

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解体工事とその後の生活をスムーズにする“挨拶回り”

② 家屋調査の提案と実施
 解体工事では、現場を含めてその周辺の地盤が脆弱であったり、隣家の老朽化が激しかったりすると、規制内の作業を行っていてもその振動で周辺の建物になんらかの影響を与えてしまうことがあります。
 そういったことが考えられる場合には、家屋調査を行うことをご提案します。
 例えば、壁にひびが入ってしまった、ドアの立て付けが悪くなってしまった、ということが起こりえます。でも、もしかしたらそれは工事以前からの不都合であることも考えられます。それを正しく把握しておくことが家屋調査の目的です。
 事前に家屋調査を行っておくことで、トラブルを回避できる場合があります。
 家屋調査については、こちらのコラムをお読みください。

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地盤状態は大丈夫? 解体前の家屋調査はとても重要。

③ できるだけ時間外工事を避ける。
 作業時間は業者やその現場によって、法的に認められている範囲内で作業の開始時間、終了時間を決めて行っています。しかし、工事の進み具合によっては既定の範囲内で時間外工事となることもあります。ただし、それは極力避けるようにしています。
 それはなぜか? 学生時代の授業を思い返してみてください。2~3分でも早く授業が終わるととてもうれしかった記憶があります。逆に、ちょっとでも授業の時間が延びると、1分が10分くらい、もしくはそれ以上に長く感じられ、イライラ、ソワソワしたものです。
 この学生時代の気持ちと、振動や騒音を我慢している近隣の方々の気持ちは似ているものがあります。「夕方の5時には工事が終わる」と思っていたのが、その時間になっても終わらないでいると、きっとイライラするのではないでしょうか。そのイライラをクレームに発展させないためにも、できるだけ時間外工事はしないことが大切です。

④ 養生を工夫
 養生は騒音や工事中の埃や木屑などを周辺に飛ばさないようにするものから、防音効果をもったものまでいろいろな種類があります。また、養生を頑丈にするだけでも、騒音をある程度抑えることも可能です。
 現地調査を通して業者と周辺環境をしっかり確認したうえで、養生を検討することでも騒音を低減できます。

⑤ 工事方法の工夫
 “解体”と聞くと、重機を使って一気に建物を取り壊すようなイメージをもっている方がいらっしゃいます。でも実際は、建物や現場の状況に応じて重機の選択やさまざまな解体手法を使い分けながら進めていきます。
 小型の重機を用いて狭い場所で少しずつ解体を進めたり、騒音対策がより重要になる現場では、重機に静穏装置を取り付けたりするなどの対策を取る場合があります。また、「手こわし」といって重機を用いずに、作業員の手作業で解体を進めることもあります。廃棄物の運び出しなども、運搬車両が入らない現場や少しでも騒音を抑えたい現場では、停車が可能な離れた場所に工事車両を停めて、その場所まで人力に搬送することもあります。いずれも手作業ですから騒音や振動が抑えられます。
 このように、工事の要所要所でさまざまな工夫を行いながら、騒音や振動の低減に努めています。解体工事における騒音対策については、こちらのコラムでも取り上げていますので、どうぞお読みください。

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解体工事の騒音がクレームにならないために

まとめ

 施主様にとっても解体工事現場の周辺で暮らす人々にとっても、気になる騒音や振動については、法律に基づいた基準にそって行われていること、騒音や振動による周囲への影響を抑えるための対策があることをご理解いただけたと思います。
 ただし、それらをどのように使い分けながら工事を進めていくかは、業者の判断によります。言い換えれば、施主様や現場周辺で暮らす方々への影響を最小限にとどめながら、スムーズに工事を行うことは、業者の工事計画と力量によるともいえます。
 さらに、よりよい解体工事とするためには、施主様と業者が現場の状況に関する情報をやり取りしながら、細やかな配慮を工事計画に組み込んでいくことが大きなポイントになってきます。
 そのため、円滑かつ周辺の方々への騒音や振動の影響を最小限にして、みんなが納得できる解体工事を行うためには、施主様と業者とのコミュニケーションが基盤であると考えています。どうぞ、ご依頼はもちろんのこと、ご依頼以前の相談・見積り等でも、お気軽にご希望やご不明点などをおっしゃってください。つねに誠意をもって皆様と向き合い、応えていきます。どうぞお気軽にお声掛けください。
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記事の監修

株式会社マトイ 営業担当菅野

株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
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