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アスベストの封じ込め工法、囲い込み工法の違いとは?

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 アスベストが私たちの健康に害を及ぼす物質であることは、すでに多くの方がご存じでしょう。しかし、その危険性が知られるまでは多くのメリットをもつものとして、建築や工業製品の生産など広い分野で多用されていました。
 現在は使用が禁止されていますが、アスベストを含んだものは私たちの周りにまだ存在しています。とくにアスベストを含んだ建材が用いられた建物は、解体・改修の時期を迎えています。
 今回は、解体工事の際に気になるアスベストの対策について取り上げます。

アスベスト含有建材に特別な取り扱いが必要な理由

 アスベストが私たちにどのような影響を与えるかが判明している現在、アスベストの使用は禁止されています。が、すでに存在しているアスベスト含有のものを処分する場合には、特別な取り扱いが必要です。
 その理由を理解するためにも、改めてアスベストの特徴などを振り返ってみましょう。

アスベストの特徴

 アスベストは石綿とも呼ばれる天然の鉱石から成ります。
 これは耐熱性・耐火性や防音性に優れ、加工しやすく安価であることから、2006(平成18)年頃までさまざまな建築資材に加工されたり、吹き付けられたりして使われていました。
 アスベストの繊維はとても細かく、特別な取り扱いをしないと周囲に飛び散ってしまいます。そして周りにいる人たちは知らないうちにその繊維を吸い込んでしまいます。このことが原因となって健康にさまざまな影響をもたらすのです。
 そのため規制前に建てられたアスベストを使用した建物の管理や改修・解体等では、アスベストの繊維の飛散を防ぐための特殊な作業を行うことが法律によって定められています。

アスベストがもたらす健康被害

 体内に吸い込んだアスベストの繊維の一部は咳や痰などと一緒に排出されますが、体内に残ったものは溶けることなく肺の組織に突き刺さったり、傷つけたりして何十年も経過した後に病気を発症します。
 アスベストによって発症する病気の多くは、次に挙げる呼吸器系のものです。

① 石綿(アスベスト)肺
 肺線維症(じん肺)とも呼ばれるもので、アスベストによって傷ついた肺の部分が繊維化して肺の機能が低下します。それに伴って息切れや運動能力が低下します。

② 肺がん
 喫煙との関係を指摘されていますが、アスベストによっても発症すると言われています。発症までは15~40年と長く、アスベストのばく露量が多いほど肺がんが発生する率が高いといわれています。

③ 悪性中皮腫
 肺を包む胸膜や腹部の内側を覆う腹膜などに発生する悪性腫瘍です。原因の多くはアスベストを吸引したことといわれています。

アスベストの種類と発がん性の違い

 アスベストは表のように6種類ありますが、日本で主に使用されていたのは白石綿(クリソタイル)、茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)の3種類です。そして、肺がんや悪性中皮腫を引き起こす発がん性は、白石綿(クリソタイル)<茶石綿(アモサイト)<青石綿(クロシドライト)の順で高くなっています。

表 アスベストの種類

分類 アスベストの種類 備考
蛇紋石族 白石綿(クリソタイル) ほとんどの石綿製品の原料として使われてきた。
角閃石族 茶石綿(アモサイト) 各種断熱保温材に使用。
青石綿(クロシドライト) 吹付石綿、石綿セメント高圧菅に使用。
アンソフィライト石綿
トレモライト石綿 吹付石綿の一部として使用。
アクチノライト石綿

 

身近にあるアスベスト含有のもの

 かつてアスベストはさまざまなところで使用され、その用途は3,000種といわれるほど。そして、その多くは以下に挙げる工業製品と建材製品でした。

① 吹付アスベスト
② 吹付ロックウール
③ アスベスト含有保温材
④ その他のアスベスト含有建築材料
⑤ 石綿含有摩擦材
⑥ その他のアスベスト製品(煙突や排気管、上下水道用の高圧管、シール材としてのパッキングなど)

 また、アスベスト製品の約8割が建材製品ということです。下の一軒の家の図には、アスベスト使用の規制がかかる以前にアスベスト含有建材を使用している部分を示しています。

※国土交通省 「目で見るアスベスト建材」(第2版)P.11より引用

アスベスト被害を未然に防ぐための主な法規

 使用を中止しても、アスベストを含んだものを使っている建物はまだまだあります。そのため、法律や規則によってアスベストによる被害を出さないための取り決めを行っています。

石綿障害予防規則

 解体・改修などでアスベストを取り扱う際に、それによって健康障害を起こさないように正しく予防対策を図ることを目的に2005(平成17)年に制定。労働安全衛生法に基づく規則で、改正が繰り返されています。
 2020(令和2)年の改正では次のことが義務付けられました。

① 建築物の解体・改修・リフォームでは、事前にアスベストに関する事前調査を行い、調査結果の記録を3年間保存する。事前調査は所定の講習を修了した者が行う。

② アスベスト含有の建材を除去する工事は14日前までに労働基準監督署に届け出る。また、一定規模以上の建築物・特定の工作物の解体・改修工事は事前調査の結果を電子システムで届け出る。

③ アスベスト含有建材の除去工事が終了して作業場の隔離を解く前に、資格者によって取り残しがないことを確認する。

④ アスベスト含有成形板や仕上げ塗料剤の除去工事では、その方法や隔離を指示。

⑤ 作業の実施状況を写真等で記録し、3年間保存。

 この事前調査を行うものは「建築物石綿含有建材調査者」の資格を有するものとされていますが、マトイでは営業社員全員が資格をもって事前調査に当たっています。安心してお任せください。
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大気汚染防止法

 大気汚染の観点から、人々の健康を保護し、生活環境を守ることを目的にした法律です。大気汚染に関する物質の種類や施設の種類・規模ごとに排出基準を定めています。
 この法律によってもアスベスト含有建材の事前調査や工事の届け出が義務付けられています。

宅地建物取引業法

 宅地や建物の公正な取引を行うことを目的とした法律です。
 この法律に基づいて、宅地建物の売買契約を行う際には、アスベスト調査の結果をその契約時に報告することを義務付けています。

 上記3点のほか建築基準法や廃棄物処理法においてもアスベストに関する規制を設けています。それらを含めた家の解体に際して知っておくべきアスベストについて、こちらのコラムでも説明しています。どうぞご覧ください。

アスベストの封じ込め工法、囲い込み工法の違いとは?

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家の解体を考えるとき、知っておきたいアスベストのこと

事前調査で安全で適切なアスベスト処理方法に繋げる

 事前調査はアスベスト含有建材や吹付の有無を確認するのはもちろんのこと、そのアスベスト使用レベルに応じた処理方法や作業時の安全管理を判断するためにも役立てます。

アスベストのレベル

 アスベストは、レベル1からレベル3というように、その飛散の危険性に応じて必要な作業と安全管理が異なってきます。

① レベル1(飛散性が最も高い)
 アスベストとセメントを混ぜたアスベストが1重量%以上含有したものを吹き付けており、アスベスト濃度や飛散性がとても高くなります。耐火建築物の柱、駐車場や機械室の天井や壁、エレベーターの周りなどに多く使われています。
 工事前には特定粉じん排出作業届など、各種届出を行います。
 工事に際しては、作業場所を完全に隔離し、集塵機を使用。作業員は保護衣・ゴーグル・高性能の防塵マスク等を着用して作業を行い、廃棄物は二重袋止めをするなど厳重なばく露防止対策を行います。

② レベル2(飛散性が高い)
 アスベストが1重量%以上含有した保温材や耐火被覆材、断熱材が該当します。これらはシート状のものが配管などに巻き付けられていることが多く、吹き付け材ほど飛散性は高くありません。
 しかし、密度が低く軽いものが多く、崩れると大量飛散を招く可能性があります。そのためレベル1と同様の厳重なばく露防止対策を行いますが、作業員の保護具はレベル1よりも少し簡易的なものも認められています。

③ レベル3(飛散性が比較的低い)
 レベル1や2に該当しない建材で、主に板状の硬く成形された建材です。床のタイルや屋根材・外壁材として使用されるものが多く、硬くて割れにくいために飛散のリスクが低いことが特徴です。
 とはいえ、アスベストを含有していることに変わりはなく、廃棄物の二重袋詰め、作業時の飛散対策は必ず行います。

アスベストの事前調査

 事前調査は下の図のような流れで進め、図内の冒頭の「書面調査」を一次調査、続く「現地での目視調査」を二次調査として行います。しかし、すべての家屋に対して2段階の調査を行うわけではありません。
 アスベストの使用等は法の改正によって段階的に禁止され、2006(平成18)年にはアスベスト製品の製造、輸入、譲渡、提供、および使用が全面禁止となりました。そのため同年9月1日以降に工事着手した建築物(鉄鋼業・非鉄金属製造業・化学業などの施設を除く)については、一次調査による書面調査で工事着手日が2006(平成18)年9月以降であることが確認できれば、二次調査は不要となります。

図 アスベスト事前調査の基本的な流れ

※環境省 「付録1事前調査の方法」Ⅰ-1-1より引用

 これらアスベストに関する事前調査は専門業者が行うものですが、アスベスト対策において家屋の所有者が行うべきこともあります。こちらのコラム内でその点についても説明していますので、どうぞご覧ください。

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アスベストの飛散を防止する3つの方法

 ここまで読んでいただいたなかで、皆さんが気になるのは「事前調査の結果、もしアスベストが使われていたらどうしたらいい?」という点でしょう。それには次の3つがあります。

除去工法

【除去工法の概要】
 使われているアスベストを完全に除去して、非アスベスト素材の建材と入れ替えます。
 これには「掻き落とし・切断・粉砕による除去法」と「掻き落とし・切断・粉砕によらない除去法」の2つがあります。
 いずれの方法にしても、除去工法では完全にアスベストを除去するので、その後のアスベスト対策の必要はありません。

【除去工法の適応】
 劣化程度の高いもの、振動などによってアスベストが飛散する恐れが強いもの、アスベスト含有吹き付け材および保温材など。

【除去工法のメリットとデメリット】
 〈メリット〉
*処理後は、その建物におけるアスベストに関する維持保全等が不要。
*その建物を解体等する際は、アスベスト含有建材等に対する配慮の必要がない。

〈デメリット〉
*除去工法実施時は環境保全・労働安全衛生に関する厳密な管理が必要。
*除去したアスベスト等の廃棄物処理を規定に沿って行う。
*取り掛かる前に、除去後に設置する代替材料の検討が必要。
*以上のことから、他の工法に比べて工事期間が長く、工事費用が高くなる。

封じ込め工法

【封じ込め工法の概要】
 建物内のアスベスト内部に固化剤を浸透させて、アスベストが飛散しないように外側から封じ込める工法。
 「塗膜性封じ込め処理(表面固化型)」と「浸透性封じ込め処理(浸透固化型)」の2種類の方法がある。

【封じ込め工法の適応】
 吹き付け、アスベスト含有の吹き付けロックウール、金属折版屋根用アスベスト含有断熱材など。

【封じ込め工法のメリットとデメリット】
〈メリット〉
*除去工法と比較して工事期間が短く、費用も比較的安価。
*工事期間が短い分、アスベストが飛散する可能性も低く、工事中に近隣へアスベストが飛散する可能性も避けられる。
*除去工法に比べて、環境保全および労働安全衛生に関する管理がしやすい。

〈デメリット〉
*処理後もアスベスト吹き付けやアスベスト含有建材は残るため、建物利用者に対する配慮や一定期間ごとに検査・メンテナンスが必要。
*対象となる部分や建材の劣化が顕著、損傷が大きい、下地との接着が不良といった場合は、封じ込め工法の実施は困難になる。
*解体等を行う際には、アスベスト含有建材の除去が必要。
*部位に応じて、粉じん飛散防止剤の防耐火等処理の検討が必要になる場合がある。

囲い込み工法

【囲い込み工法の概要】
 アスベスト含有建材等はそのまま残し、アスベストが吹き付けられている箇所を非アスベスト建材で覆うことでアスベストの飛散を防止する。
 工事終了後は、一定期間ごとの検査やメンテナンスが必要。

【囲い込み工法の適応】
 アスベスト含有吹き付け材、および保温材。

【囲い込み工法のメリットとデメリット】
〈メリット〉
*除去工法に比べて、環境保全および労働安全衛生に関する管理がしやすい。

〈デメリット〉
*処理後もアスベストが残る。
*工事後、室内や天井高が減少する場合が多くある。
*アスベスト吹き付け材や保温材等の劣化や損傷が大きいとこの工事実施は難しい。
*処理後は定期的な検査やメンテナンスが必要で、囲い込み時に点検用の開口が必要。
*部位によっては囲い込み材料の防耐火等の処理が必要。
*場合によっては、工事前に飛散防止剤による処理が必要になる。

封じ込め工法と囲い込み工法の使い分けポイント

 封じ込め工法も、囲い込み工法も、共通していることは、アスベストの飛散を防ぐものであり、アスベストを完全に除去するものではありません。そのため、建物を解体したり、大型改修をしたりする場合には、除去工法によってアスベストを完全に除去する必要があります。
 また、アスベスト使用部分の劣化や損傷が激しい場合も、除去工法の適用となります。 アスベスト表層の毛羽立ち、アスベスト繊維の崩れ、アスベストの垂れ下がり、下地間の浮き・剥がれ、アスベスト層の損傷や欠損、といったものがみられる場合です。
 こういった状態がなく、なにかの接触や振動による損傷がない場合は、封じ込め工法や囲い込み工法のどちらかで飛散を防ぐことが可能となります。
 そのどちらの工法を用いるかの判断は、アスベストの使用状態やその場所との関係があります。
 アスベストが使用されている箇所を非アスベスト建材で囲って飛散を防ぐ囲い込み工法では、その分のスペースを必要とします。また、点検用の開口部分も作るために、どのような場所にあるかで、囲い込み工法を行えるかどうかが変わってきます。いずれにしても、現場の状況を合わせみながら、どのような工法を選ぶかは、専門家の意見を仰ぐ必要があります。
 アスベスト使用に関する相談、事前調査を含めて、建築物石綿含有建材調査者や石綿作業主任者など一定の条件を満たした専門家がいる業者に相談してください。

まとめ

 アスベストは確かに健康への影響は大きいものですが、決められたプロセスを踏んで正しく対策を進めていけば悪影響は避けられます。過剰に怖がる必要はありません。
 大切なことは、アスベストの対策を熟知し、事前調査から飛散防止対策、そして施主様の相談や近隣の方々への配慮等を含めてしっかりした対応を取れる業者を選ぶことです。そのためのポイントについては、こちらのコラムでまとめていますので、どうぞお読みください。

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記事の監修

株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)

株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
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