解体するときの基礎とは? 家の土台がわかる方法をお伝えします
かいたいコラム 物事や人の話でも、その中心や核となるものがあります。建物も同じです。
建築に携わる者から見た場合、建物の核となるのはやはりその土台を造っている基礎部分です。基礎はほとんど人目に触れることはありませんが、建物を支える最も重要な部分です。それは解体する際も変わらず、どのような基礎であるかによって解体方法や工期などが変わります。今回は、建物にとって重要な役割を担っている基礎について解説します。
押さえておきたい、建物の「基礎」の基礎知識
「基礎は家の土台を造っている」ということは多くの人が知っていることと思います。しかし、これ以上のことは、普段は目にすることがないだけに、あまり知られていないのではないでしょうか。そこで、最初に「基礎」について説明します。
そもそも「基礎」とは?
繰り返しになりますが、基礎は建物を支える土台を造っています。私たちがいつも目にする上に造られている部分を「上部構造」と呼ぶのに対して、目につくことがあまりない土台部分を「下部構造」という呼びます。基礎はこの下部構造の最下部になります。
基礎があることによって、建物自体の重さを地盤に伝え、地震や風などの外力から家を支えながら守っています。この基礎部分がなかったり、上部構造に合った構造でなかったりすると、建物の沈下や傾き、倒壊などを引き起こす原因になります。
知っておきたい基礎の種類とそれぞれの特徴
一言で基礎といっても、上の図のようにいくつかの種類があります。まず、大きくは杭基礎と直接基礎という2種類に分かれます。
杭基礎は、コンクリート製の杭を地盤に深く打ち込んで基礎を作ります。地面に杭を打つことで地盤を固くするとともに、地盤が地中の深いところにある場合にそこまで杭を打つために耐久性と安定性が高くなります。鉄筋コンクリート造の建物や地盤が緩い土地に建物を建てる場合にこの基礎が設置されます。
一方、直接基礎とは、地盤に直接建物を支えさせる基礎です。地盤に十分な固さがある、建物の荷重がさほど大きくかからないときに直接基礎を用います。この直接基礎には、「独立基礎」、「ベタ基礎」、「布基礎」の3種類があります。それぞれについて説明していきましょう。
①独立基礎
これは建物の柱の下の部分だけに独立した基礎があり、その基礎同士を「地中梁」と呼ばれる鉄筋コンクリートの梁でつなぎます。これはショッピングセンター、オフィスビル、マンションなどの大型建物に使われ、一般的な住宅にはほとんど使われません。
②ベタ基礎
床下全面に鉄筋コンクリートを打って作ります。そのため地盤と接する部分が多く、建物の重さが分散されるため、安定性と強度に優れます。地盤が軟弱な土地、建物の重量が大きい場合にこの基礎が用いられます。さらに地面からの湿気やシロアリなどの侵入も防ぐ効果もあります。その一方で、鉄筋コンクリートを床下全面に使うことから、施工時や解体時の費用が高額になります。
③布基礎
建物の柱の下に逆T字状の鉄筋コンクリートを打ち、その柱と柱の間にも基礎を作ります。ちょうど独立基礎と布基礎の中間のような形で、ベタ基礎のように床一面にコンクリートを流し込むのではなく、柱の下や柱と柱の間以外には基礎はなく、空間になります。建物の面部分には防湿コンクリートを用います。防湿コンクリートは薄い層からなるコンクリートなので、耐久性や安定度はほかの基礎より低くなります。木造で地盤の強い土地に用いられ、施工も解体も比較的安価にできます。
住宅では、ベタ基礎もしくは布基礎のいずれかが用いられますが、一般的には布基礎が用いられています。
解体工事における基礎解体の重要性
強さの違いはあるものの、基礎は家にとって欠かせないものです。しかし、普段は地中にあってあまり目に触れる機会がないものだけに、「解体に手間がかかるなら、そのまま地中に置いておけばいい?」などという考えもわくかもしれません。しかし、それは土地の価値を下げることになります。
基礎部分が残っているかどうかで変わる土地の価値
いくら建物を支えてきた基礎であっても、上部構造が撤去された後は、ただのコンクリートの塊の瓦礫となり、産業廃棄物を地中にそのままにしているのと同じです。
例えば、人が住めないような状態の家をそのままにして土地を売却しようとすると、土地の価値はぐっと下がってしまいます。基礎だけが残っている場合も同様で、その土地を購入してから撤去作業に費用や時間がかり、新しい建物の着工が遅れることも考えられます。土地を購入して、新たに建物を建てようと考える人からは敬遠されてしまい、なかなか売れにくい状態です。そういう理由から、周辺環境や広さなど同じような条件の更地と比較した場合、利用価値がなくなった家屋がある、基礎が残っているといった状態だと売値は低くなります。
こういったことから、できるだけ家屋を解体してきれいに整地した方が、その土地本来の価値を認めてもらい、適正価格で売却できる可能性が高くなります。
解体の費用を左右する基礎の違い
ご存じのように解体工事には高額の費用がかかります。その主なものは建物の解体費用そのものと廃棄物処理にかかる費用です。見積り上は基礎解体の費用は「建物解体工事」として建物の上部構造とまとめた形で記載されている場合が多いようです。
基礎部分の解体費用ですが、実はその種類によって大きく異なります。業者や建物の構造などによっても違いはあるものの、布基礎とベタ基礎ではベタ基礎の方が3~4倍近くの費用がかかります。それは、建物の土台部分全体に鉄筋コンクリートを敷き詰めて作るベタ基礎は、その分、解体の手間がかかり、発生する産業廃棄物や廃棄物の量が多いために処分費用がよりかかるためです。
このことから、解体する建物の基礎が布基礎であるかベタ基礎であるかによって、解体費用の総額も大きく変わってきます。多くの業者は、事前に確実に基礎の内容がわかっている場合を除いて、基本的に見積りの段階では布基礎で概算を出すことが多いです。そして、確実にベタ基礎であることがわかったときには、追加費用として請求させていただくことになります。
なお、杭基礎と独立基礎は一般住宅ではあまり用いられていないため、ここでの説明は省かせていただきます。
家の土台を事前に知って工期も費用も極力予定通りに進める方法
基礎の種類によって費用が大きく変わることはご理解いただけたと思います。基礎の違いは費用だけでなく工期にも影響を与える場合があります。なぜならば、コンクリートを解体することは、とても手間と時間がかかるからです。そのときに搬入した重機で解体が難しく、別の重機に変えることもあります。となると、重機の入れ替えだけで1日かかって、工期に影響を与えることもあり得るのです。
工期も費用も当初の予定通り進めたいのは施主様にとっても私たち業者にとっても当然の思いです。そのためには、できるだけ事前に土台がどのような種類であるかを確認しておきたいところです。そのためにはどうしたらよいかを説明します。
できれば現地調査時に竣工時の見取り図を準備
竣工時の見取り図には、どのような基礎がどのくらい施工されているかが記載されている場合があります。解体業者にそれを見せると、ある程度、基礎の状態がわかります。
ただ、「竣工時の図面が見当たらない」ということもあるでしょう。とくに建築してから長い年月が経っている場合は難しいかもしれません。そのようなときは、建物を施工してもらった業者に連絡すると用意してもらえる可能性がありますので、問い合わせてみてください。
現地調査で直接、基礎部分も確認
竣工時の見取り図がなかったとしても、ある程度、どのような基礎であるか目安をつけることは可能です。
現地調査の際に、建物の基礎の一部分を掘り起こしてみたり、排気口から床下部分を観察してみたりして確認することができる場合もあります。
心に留めておきたい「地中埋設物」などの想定外
前述のように見取り図を確認したり、現地調査に際して実際に見て確認したりしても、「基礎部分の確認が完全にできる」とは断言できません。
実際に基礎の上にある上部構造である家屋を撤去してみたら、現地調査時に確認できていた基礎とは違っていた、ということがあります。さらに、事前に確認した通りの基礎だったとしても、解体作業を進めていくうちに地中から瓦礫や、以前の建物の基礎らしきものが出てきた、ということもあります。建設リサイクル法ができて廃棄物処理に対する意識・規制が整備される以前は、廃棄物を地中に埋めることもあったためです。
いくら事前に確認しても、追加工事が発生する可能性は常にあります。そのため解体工事はもちろん、その他の工事も同様に工期や予算にも余裕をもっておくことが大切です。
まとめ
「塔は下から組め」ということわざがあります。これは、立派な塔は立派な土台の上に建つ、ということを意味し、そこから「仕事をするときには、土台をしっかり固めてかかれ」、という意味も含まれているそうです。この言葉どおり、基礎は建物の土台となって建物とそこで暮らす人たちを守っています。
それだけ重要な役割を果たしてきた基礎ですから、そうやすやすと解体できるものではありません。コンクリートを使っているということはもちろんですが、その構造からも安定した強固な造りになっています。その分、解体に手間がかかるのは当然です。
私たちマトイでは、まさに「縁の下の力持ち」である基礎部分の解体にはことに力が入ります。
追加工事は、できれば避けたいものです。マトイでも業者として施主様のご負担を増やす追加工事の発生には、心苦しさを感じることがあります。しかし、基礎解体とそれに続く整地作業をしっかり行うことで、その土地に新たなエネルギーを吹き込み、安全性の高いよりよい建築物を建てるための土台作りにつながるという信念をもっています。
我々は、施主様に真のメリットをもたらすことは何であるかを常に考えながらご提案し、施主様とコミュニケーションを取りながら作業を遂行しています。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
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