使わない井戸。埋める? 壊す? どんな方法で処理できる? そして費用は?
かいたいコラム最近では、あまり見かけなくなったように思う「井戸」。でも、あらためて見ると、身近な風景のなかにまだ井戸はあるものです。そのため、家の建て替えや売買をきっかけに井戸の存在に気づいて、井戸の処理について考える方も多くいらっしゃいます。今回は、そういった井戸とその処理方法について解説します。
井戸の原理と種類
まずは井戸の原理やタイプについて説明しましょう。
井戸から水が汲める原理は…
井戸はなかにたまった地下水を汲み上げて利用しています。汲み上げる仕組みは井戸のタイプによって若干の違いがあります。が、基本となる原理は一緒です。
それはストローを使ってコップに入っている飲み物を飲む際の原理と同じ。コップのなかにある飲み物の水面には大気圧がかかっています。飲み物に差し込んだストローを吸うと、ストローのなかは真空状態となって飲み物が上がってきます。これと同じポンプ作用によって地下水が汲みだされ、利用することができるのです。
なお、ポンプ作用を起こすためには、井戸のハンドルを上下させて人力で水を汲み上げる「手押し井戸ポンプ」と電気を使った「電動井戸ポンプ」、そして停電時などにも使用可能とした手押しポンプと電動ポンプを併用したものなどがあります。
井戸の種類について
【掘り抜き井戸】
これはロープや縄を結び付けた桶やバケツを使って、井戸のなかにたまっている地下水を汲み上げるタイプの井戸です。名前を聞いてピンとこないとしても、テレビの時代劇などで目にしたことがあるのではないでしょうか。
穴の直径は60㎝程、深さは6m前後です。なかにはその倍近くの深さがあるものもあるそうです。このタイプの井戸は、井戸の直径や深さを調節することで希望の水量を確保できます。
【打ち込み井戸(打ち抜き井戸)】
打ち込み井戸は打ち抜き井戸ともいい、先の方に小さな穴が開いたパイプを地中に打ち込み、そのまま地下水を吸い上げます。パイプの直径は5~10㎝程度なので狭い場所でも掘ることができ、しかも工事中に出る砂利や土も少ないので、比較的手軽に掘ることができます。ただ、その分、水量は少なくなるというデメリットがあります。
【井側井戸】
浅い層まで手掘りして、そこに「井側」という円筒状のコンクリートの枠をはめ込みます。地下水をその中に溜めておくため、水量が乏しい場所や不足しがちな季節にも対応が可能です。
【ボーリング井戸】
人手では難しい硬い地層や地中の深くまで、機械を使って円筒状の穴を開けて地下水をくみ上げる形の井戸です。深い場所まで掘り進めることができるため、他の井戸よりも安定した水量と良質な水質が期待できます。
井戸の埋め戻しなどをお考えの際、「うちの井戸の種類がわからない」ということがあっても大丈夫です。私たちがしっかりと事前調査を行ったうえで、適切に工事を行いますので、まずはお気軽にこちらまでご相談ください。
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人の命と暮らしを支えてきた井戸と水の考え方
現代の私たちの生活では、衛生的でおいしい水をすぐに飲むことができます。それは水道設備が完備されていること、また物流も発達して好みのミネラルウォーターがすぐに手に入る環境が整っているからです。
しかし、世界を見渡すと、そうではない状態で暮らしている人たちもたくさんいます。また、私たちの何代か前の人たちも清潔な水を入手するために苦労していました。
生き物として水は欠かせないもの
私たち人間の体は、ほとんどが水分でできているといわれています。成人では60%前後、高齢者では50%前後、子どもは70%前後が水分です。この割合は犬や猫も同じだそうです。そのため、私たちは水分バランスを保ちながら、体調を常に整えています。生物として、水分は絶対的に欠かせないものなのです。
神が宿る神聖な場所として信仰の対象にもなっていた
現在のようにインフラ設備もほとんどない暮らしのなか、簡単にきれいな水を得ることができなかった昔の人々にとって、きれいな水はとても貴重なものでした。水が人にとっても動物にとっても欠かせないまさに命の源であること、そして汚れた水が自分たちの健康を損ねる原因となることも経験からわかっていたのでしょう。それだけに水を貴重なものとし、滝や井戸には神や霊が存在するとの考えも生まれ、大切に扱ってきました。
山から海への循環でさまざまな生命と自然を守る、いまでも貴重な水
私たちが生きていくためには、水は欠かせません。海の水が蒸発して雲となり、そして雨となって地上に注ぎ、それが再び海へと注がれる過程で、私たちもその水をもらっています。水を取り入れる形は変わってきているものの、生物としての私たちにとって水は相変わらず大切なものに変わりません。人間の営みの過程で、この循環を滞らせたり、汚したりしないように注意することが大切です。こういったことを考えると、昔の人たちが“水に神様が宿る”として大切に扱ってきたことが理解できます。
井戸を解体する際の流れ
では、実際に井戸を解体する際にはどのように行うか、その流れを説明します。井戸を解体・撤去する場合の多くは、「埋め戻し」といって、井戸の穴を砂や土などで埋めてふさぎます。この埋め戻しは、お祓いや息抜きに続いて行われます。
お祓い(魂抜き)
お祓いは、施主様の考えにより行う場合と行わない場合とがあります。しかし、井戸に関しては比較的多くの方が、お祓いを行ってから解体を行います。これは前述のように、井戸に神様や霊が宿っている、という考えが影響している面があるようです。同時に、長年、そこで暮らしてきた家族・一族の生活を支えてきてくれたことへの感謝の気持ちもあるでしょう。このときのお祓いは、井戸に宿っている神様や霊の魂を抜くということから「魂抜き」とも呼ばれます。
なお、その土地を売却する際、井戸のお祓いをしてあるか否かで、売買契約の成り行きを左右する場合もあるようです。
お祓いに対する考え方は、施主様それぞれによって異なります。どうするかはあくまでも施主様の判断に委ねられます。同コラムにおいても、お祓いについて取り上げたものがあります。判断に迷う際などは、参考にご一読ください。
息抜き
息抜きには、2つの意味があります。1つは井戸を埋めるに際して、そこに宿っている神様や霊が井戸の外に出られるようにするということ。もう1つは、井戸のなかにたまっている水やガスなどを排出するためです。
長期間使用していない井戸には、底に木の葉や土砂、水・ガスがたまっていることがあります。それらがたまったまま埋めてしまうと、後に地盤に悪影響をもたらす可能性があります。そのため、堆積しているゴミを除去した後、井戸の口から底にかけてパイプを通して、底にたまっているものを排出します。
井戸の埋め戻し
前述のように、井戸の穴を土や砂などを入れて塞ぎます。このとき大切なことは、できるだけ井戸がある場所の地層に合わせて、土砂を埋めていくことです。とはいえ、まったく同じ地層にすることは難しいものです。そのため、次のような点に注意して、私たち業者は埋め戻しを行っています。
① 地下水の流れを邪魔しないため、井戸の底部分は砂利や砕石で埋め戻す。
② 井戸の上部は、雨水や汚水などが入らないように土状のものを使って埋める。
このように、井戸の底部と上部を砂利や土を使い分けて埋め戻していきます。この区別をしっかり行わず、間違った方法で埋め戻してしまうと、地下水を汚染することがあります。
整地
井戸の埋め戻しが完了したら、その場所と周辺を整地し、掃除を行って終了となります。なお、多くの場合、息抜きのためのパイプは刺さったままにしておきます。それは井戸があった位置がわかるようにしておくための印でもあります。その後に建物を建てる際に、取り除くことになります。もし、井戸の埋め戻しだけの場合は、解体業者にパイプを抜く時期を確認し、適切な時期に抜いてもらうように予定しておきます。
井戸を解体する際の注意点
前項でも触れているように、井戸を埋め戻す際は、ただ穴を埋めればいいというものではありません。周辺を含めての水質や地盤への影響を考えた配慮が必要です。それぞれについて、ここで改めて説明します。
水質保全の意識をもって作業する
井戸の埋め戻しを行う際に何よりも重要なことは、水質への配慮です。そのため、埋め戻し前の息抜きでは、パイプを差し込む前に井戸内にたまっている木の葉やごみなどを除去してからパイプを差し込んでいます。また、地下水の流れの邪魔や、地下水の汚染をしないように埋め戻す順番とそれに応じた砂利や土の選択をしっかり行っていきます。地下水は井戸があった場所を含めて、脈々と流れて循環しています。どこか1か所でも汚染源となりうる場所があれば、私たちの生活に影響を与えることになるのです。そういうことを引き起こさないためにも、井戸の工事では、水質を守る意識を大切に工事にあたります。
地下に建造物や地中埋設物がないかを確認
事前調査や井戸の埋め戻しを進めるなかで、地下に建造物や埋設物を発見することがあります。一緒に撤去したいところですが、それは大きなリスクをはらんでいます。なぜならば、それらが存在することで、周辺の地盤を支えている可能性があるからです。安易に撤去して、近くにあった建物が傾いてしまうこともあり得ます。そのため、事前に地下に建造物や地中埋設物の有無を確認しておくと、その後の作業がスムーズに進みます。
解体・撤去は解体業者に
井戸を埋め戻す、といっても、ここまで説明してきたように、地下水への配慮や地中埋設物への対応、そして作業範囲が狭いなかでの重機の取り扱い作業などは、一般の方ではかなり難しい点があります。そのため、その後の水質や地盤への影響などのリスクを低く抑えるためにも、解体業者におまかせいただくのがベストです。
井戸解体にかかる費用の目安
井戸の解体―埋め戻しの費用は、一般的には家屋の解体よりも低価格です。ここでは、費用について説明します。まず、井戸の解体費用の目安を知る際に、わかっておきたいことがあります。それは、井戸だけを解体するのか、家屋と一緒に解体するのか、ということです。これによって費用は変わってきます。また、ここに挙げる金額は、あくまでも目安です。解体する井戸の大きさや深さ、立地条件などによってさらに金額は変動します。さらに、お祓いを行う場合は、その費用が加わってきます。
井戸だけを解体する場合の費用の目安
井戸だけを埋め戻す場合の費用の目安 150,000円~
井戸を埋め戻す際、井戸の大きさ、深さ、立地条件などによって費用に差が出てきます。また、井戸の埋め戻しを行うには、コンクリートやレンガなどのリサイクル砕石やリサイクル砂などを使用しますが、できるだけその場所の地層に合わせた石や砂の質や材料を選びます。そのため、なにを選ぶかによっても費用が変わります。
家屋解体と同時期に行う場合の費用の目安
家屋解体と一緒に埋め戻す場合の費用の目安 100,000円~
家屋の解体と一緒に井戸の埋め戻しを行う場合は、家屋の解体費用のほかに井戸の埋め戻し費用が発生します。しかし、埋め戻し費用だけを見ると、井戸だけを埋め戻す場合よりも費用相場は安くなっています。これは家の解体工事の際に出た基礎部分のコンクリートを砕いた砕石を、井戸の埋め立てに使えるためです。しかし、必ずしも基礎コンクリートが井戸の埋め立てに使えるわけではありません。土地の地盤の状況などによっては使えず、別に砂を追加購入する必要が生じる場合があります。その際は、ここに挙げた相場よりも高くなることがあります。
お祓いを行う場合の追加費用の目安
井戸埋め戻し前のお祓いの費用の目安 30,000円~
井戸の解体に際してお祓いを行う場合は、埋め戻す前に行います。お祓いに際しての準備等は、解体業者の担当者に相談すれば、お祓いを行う神社や寺院への連絡から必要なものの準備まですべて行ってくれるところがほとんどです。
しかし、その形は施主様の要望によって変わります。氏神様を祭った神社の神主や僧侶等を呼んで、しっかりとお祓いを行う形式をとる場合もありますし、そうでなく塩や御神酒などを準備してお清めをする程度で済ます場合もあります。いずれにしても施主様のお考えに沿って行うため、どのように行うかは考えておいたほうが良いです。
なお、お祓いにかかる費用には、神主に渡す玉串料(僧侶の場合はお布施)と送迎もしくは交通費、お供え物や紙コップなどの必要となる小物の費用、お祓いに必要な御神酒などのお供え物などが入っています。
お祓いにあたって、多くの人が持つ疑問についても以下のコラムで説明しています。どうぞご覧ください。
井戸解体を検討する際のポイント
上下水道設備がほぼ完備されている現在、水の供給を井戸に頼る率は少なくなっています。しかし、だからといって“無用の長物”として埋め戻すのではなく、本当に無用であるかどうかしっかりと検討することが大切です。
本当に解体が必要かどうかを見極める?
井戸の解体を考えるとき、最初にその井戸はほんとうにもう使えない井戸なのか? ということを調べてみる価値があります。なぜならば、もし使うことが可能ならば、残しておいてもいいからです。地下水を利用する井戸は生活用水や災害時に役立ちます。
「そうはいっても、家屋も解体して土地を売却予定だから」というケースもあるでしょう。しかし、古家付き土地や新たに土地を購入する人のなかには、使える井戸が備わっていることに魅力を感じる人がいます。
しかし、すでに水脈が変わって枯れ井戸になっていれば別です。お祓いを済ませて、きちんと埋め戻しをした状態で、井戸があったことを伝えるのがマナーです。いずれにしても、庭の隅にある井戸などは、埋め戻す前に水脈がまだ生きているかどうか、井戸として再び利用することが可能かを確認してみるとよいでしょう。
防災井戸として復活利用という方法も
防災に対する関心が高まっている現在、井戸の存在が見直されています。生活用水としての活用はもちろんのこと、井戸端を解体・改修してポンプを手動と電動を併用として停電時にも使えるようにして、地域の防災井戸として活用するところが増えつつあります。実際に、そうした災害時対応のために井戸を指定・補助制度を設けている自治体もあります。
解体に際しては、複数業者に相見積りを
解体中の家屋の床下から枯れ井戸が出てきた、ということはたまにあります。そういった井戸は、多くの場合、その上に建物が建てられた段階で井戸としての機能を果たさなくなったものと考えられます。その場合は、埋め戻すしか方法はないでしょう。
それ以外の理由から井戸を埋め戻す場合においても、大切なことはしっかりと埋め戻しの作業を行ってくれる業者を選ぶことです。工事料金も解体業者によって、それぞれ異なります。複数の業者に掛け合って、相見積りを依頼しましょう。そのうえで見積り内容の丁寧さ、追加料金が発生するケースの対応と価格、全体の料金が良心的であることなどを見極めて、業者を決定するとよいでしょう。
なお、見積りの依頼の仕方や見積り書を確認する際のポイントなど、以下のコラムで説明しています。また、解体工事を業者へ依頼する際の流れなども説明していますので、井戸の解体においても参考にできます。どうぞご一読ください。
まとめ
環境面や防災面でも見直されつつある井戸の存在ですが、使える井戸は可能なら活用し、使えなくなった井戸はきちんと解体して埋め戻すことが大切です。
井戸の解体工事は、私たちマトイでも多く手掛けています。何か気になる、解体予定は決まっていないが事前情報として聞きたいことがある、などがありましたら、お気軽にご相談ください。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
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