未登記の建物を解体、売却するには。気をつけることや手続きなど。
かいたいコラム 親や親族から土地や家屋などの不動産を相続することは、よくあることです。そのときに、扱いをどのようにしようか、と考えるでしょう。引き継いで自分たちが移り住む、誰かに貸す、建物を解体して新たに家を建てる、古い建物を解体して更地にして売却する……など、その扱い方はさまざまです。
しかし、ぜひとも注意して確認すべきこととして、その建物が登記されているかどうか、があります。古くから存在しているものであればなおさらです。
登記されていない古い建物は案外あって、その家屋の売却や解体の際に問題になることがあります。
今回は、そうした未登記の建物をテーマに取り上げます。
未登記建物とは
まずは建物の登記と未登記建物とはどのようなものかについて説明します。
建物登記の目的
建物や土地は、それを取得した時点からその内容として、
*どこにあって、
*どのくらいの広さがあって、
*だれが所有しているのか、
といった内容を法務局に知らせ登記することになっています。
これによって、不動産に関する情報が公に示されて所有が明確になります。
もしもその不動産を売却したり権利を委譲したりするような場合にも、所有や登記に関するトラブルを避けて計画を進めることができます。
不動産登記の流れ
不動産を登記するには、法務局に申請する必要があります。この申請手続きは、自分で行うことも、司法書士のような専門家に依頼することもできます。
また登記には、どのような内容の登記をするかによって「登録免許税」という税金が発生します。この額は、登記を行う理由によって異なってきます。さらに登記を自分で行う際は、必要経費は登録免許税、必要書類の準備に必要な発行手数料や交通費等の諸雑費で済みますが、専門家に依頼する場合はそのための手数料がかかります。
登記申請は次のような流れで進めます。また、インターネットで申請することも可能です。
Step1 必要書類を準備
Step2 登記書類の作成、必要書類を添付して法務局に提出
必要書類は不動産がある管轄の法務局に提出する。
Step3 登記官による審査
申請書類等を受けて、登記官による審査がある。申請に不備がないことを確認した後、登記記録等に必要事項が記入される。
Step4 登記簿に記載
法務局の登記官が識別番号登記記録に記録して登記完了。
Step5 登記識別情報通知書(権利証)の発行
申請者が申請書に押印したものと同じ印鑑を持参して法務局に行き、登記官が作成した登記識別情報通知書(権利証)を受け取る。
この受け取りは、登記完了から3か月以内に行う。
Step6 登記申請手続きの完了
受け取った登記識別情報通知書(権利証)の再発行はされないため、厳重に保管。
なお、未登記建物では、上記のStep1からStep6までの流れを、表題部と権利部の2種類を行うようになります。それについては、後に説明します。
未登記建物とは
今回のテーマである「未登記建物」とは、上記のような不動産登記をしていない建物をいいます。
ただ、古い建物などになると、権利証等の所在が不明になっていて、法務局で調べてもその建物の登記簿が見当たらない、といったことがあります。
これは建物が建築された後、相続や売買によって何回かにわたって敷地が分割されるなどした結果、建物の家屋番号と敷地の地番が対応しなくなって、検索が困難になったケースもあります。そのため、古い記録までさかのぼって調べることが必要です。
また、銀行ローンなどに頼らずに自己資金で建物を建てる場合に、登記費用の節約や固定資産税の支払いを免れるために登記をしないケースもあります。(もちろん、法務局とは別に市役所でも独自の調査をするため、固定資産税を免れるわけではありません)
このような理由から、未登記建物が存在しています。
未登記建物が抱える問題点
では未登記建物はそのままにしておいて大丈夫でしょうか?
未登記建物を売却などなんらかの方法で活用を考える際、未登記のままでは次のような問題点があり、計画を進めることが困難になる可能性があります。
手続きが煩雑
未登記建物の登記は、「表題部」を登記し、次に「権利部」の登記の2段階にわたって行う必要があります。
「表題部」の登記では、建物の所在・構造・大きさ・建築時期などの情報を登録します。専門家に依頼する場合は、土地家屋調査士に依頼することになります。
「権利部」の登記は、「建物の所有者」に関する情報を登録する所有権保存登記が含まれています。これは表題部を済ませなければ行えません。専門家に依頼する場合は、司法書士に依頼することになります。
表題部の登記も権利部の登記も、自分で手続きを行うことは可能です。それによって経費も節約できます。しかし、とくに表題部の登記手続きでは、専門的な間取り図面の作成などが必要であったり、申請書類に不備があった場合は再度作成して、法務局に提出しなくてはならなかったりして、手続きが煩雑になります。こういった手続きに不慣れである、時間がない、という方は専門家に依頼した方がいいかもしれません。
もちろん、マトイでも手続きに関するご相談をいつでも受け付けていますので、お気軽にお声を掛けてください。
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銀行からの融資が受けられない
土地の所有権などを抵当権に設定して、担保にすることで銀行から融資を受けることは可能です。家を新築したり、新たな不動産を購入したり、事業資金などを準備する際に、銀行からの融資は重要になってきます。しかし、そのための不動産が未登記であると、銀行融資を受けられません。
未登記物件を解体する場合、相続人の同意が必要
未登記物件を解体する場合、相続人が複数名いる場合は全員に解体の同意を得なくてはなりません。そのうえで解体を行い、自治体に家屋滅失届を提出することで、未登記建物が無くなったことの証明となります。
また、滅失届が受理されると、翌年から建物に固定資産税がかからなくなります。
登記を確認しないまま解体することは犯罪になりかねない
上記のように、相続人が複数名いた場合、その人たち全員の同意を得ることなく未登記建物を解体することはできません。また、未登記建物と思っていても、きちんとそのことを確認しないと、なかには別の人の名義になっている場合があります。その場合、登記上の所有者に許可を得ず、勝手に解体すると建造物損壊罪になりますので、登記の有無は事前にしっかりと確認する必要があります。
登記実行までに時間がかかる
未登記建物等の登記は、相続や融資などの必要に迫られた段階で未登記であることに気づいて、手続きを開始することも多いようです。
しかし、ここで注意したいのは、登記実行までには時間がかかるということです。
登記申請をしてから登記が完了するまで1週間前後はかかります。その他に、申請に必要な書類をそろえたり、相続時には親族の同意を求めたりといった時間を考えると、何日かかると明確に区切ることはできません。
そのため、時間がかかることを覚悟しておくことが必要ですし、登記後に建て替えや売却を予定している場合は、その点も考慮して計画することが大切です。
相続時に混乱を招く可能性が大きい
例えば、自分が所有している建物が登記をしていない場合、次に誰かにその建物を継がせる場合にいくつかのトラブルが起こる可能性があります。
それは、相続人が相続登記を行っていないと、別の相続人に遺産となるその建物を奪われてしまう可能性があるからです。また、だれが登記費用を支払うべきか、ということでも混乱を招くこともあります。
これらのトラブルを避けるためにも、しっかり登記して、権利をはっきりとさせておくことが大切です。
相続放棄していても、相続人の立場だった人に固定資産税がかかる
相続放棄の手続きを行えば、未登記不動産に関する固定資産税の支払いを免れることは可能です。しかし、相続放棄することで、未登記不動産以外の財産も相続できなくなります。未登記不動産だけを相続放棄して、固定資産税の支払いを免れることはできません。
また、固定資産税は1月1日時点での不動産所有者に支払い義務があります。そのため、被相続人の方が亡くなった日から、相続手続きまでに時間がかかると、固定資産税の支払い請求が相続人の立場だった人に届く可能性があります。
売却が難しい
未登記建物を売却することは不可能ではありません。しかし、未登記建物は固定資産税の軽減措置を受けられない可能性があり、すでに説明したように住宅ローンやそれを担保にして融資を受けることもできません。さらに登記をするためには10万円以上の費用がかかります。これらのことから、買う人は見つかりにくく、売却も難しいといえます。
未登記建物を売却するために必要なこと
これまで説明してきたように、未登記建物にはさまざまな問題点が含まれています。でも、だからといって有効活用できないわけではありません。ここでは、有効活用のための売却や解体をするために必要なことについて説明します。
登記手続きを行う
まず必要になることは、登記を行うことです。
登記については前半部分でも少し触れましたが、あらためてここでも説明します。
未登記建物の登記は、「表題部」と「権利部」の2段階にわたって行います。
表題部の登記
表題部の登記では、建物がある場所・構造・大きさ・建築時期などを登録します。これには次の書類が必要です。
1.登記申請書
2.建物図面、各階平面図
3.建築確認書および検査済証
4.建築代金の領収書
5.施工業者からの引き渡し証明書
6.固定資産税の納付証明書
7.印鑑証明書
8.申請人の住民票
上記書類の3~6は建物の所有者であることを証明するためのものです。これらは紛失していてそろえられないことがあります。その場合、もし手続きを依頼するのであれば土地家屋調査士に、そうでなく自分で手続きをするのであれば法務局に問い合わせてみてください。
権利部の登記
権利部の登記は、表題部の登記が済んでから行います。これは、建物の所有者に関する情報を登記するもので、必要書類は次の通りです。
1.登記申請書
2.申請者の住民票
3.委任状(司法書士に依頼する場合)
親の代から未登記の場合
なかには、親の代からから登記がされていなかった、というケースもあります。その場合は、前述の登記手続きを親の代にさかのぼって行うことになります。親の代の登記が終ったら、次に相続をした自分の名前で登記変更をします。
未登記建物を売却するための3つの方法
未登記建物だから売却できない、ということはありません。ただし、未登記のままでは売却しにくい、買手がつきにくい、という状況があります。そのため、登記を行うことが必要です。その方法としては、次の3つがあります。
① 建物を登記してから売却する。
古家や古家付き土地の処分や売却に関する一般的な情報は、こちらのコラムで解説しています。参考になさってください。
② 建物を解体し、建物がなくなったことを証明する「家屋滅失届」(家屋取壊届ともいう)を提出してから売却する。
なお、建物の解体に付随する手続きについて、こちらのコラムで取り上げていますので、ご覧ください。
③ 売買後に登記手続きをする。
以上の3つの方法があります。
最後にあげた「売買後に登記手続きをする」場合は、売り主側の二重譲渡や第三者名義で登記されてしまうリスクがあります。そのため、買い主は代金決済後、速やかに表題登記と所有権保存登記の手続きをすることが重要です。
未登記建物と解体できる業者を探す際のポイント
相続や所有している建物がもしも未登記だとしても、解体することはできます。しかし、未登記であることはこれまで説明してきたように、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。登記してあるかどうか曖昧な状態であれば、しっかりそれを確認したうえで解体するのがいいでしょう。
登記の状態を調べる方法
では、登記してあるかどうかはどのように調べたらいいでしょうか。その方法には次のようなものがあります。
① 固定資産税納税通知書を確認
登記されている場合には、固定資産税納税通知書に同封されている課税明細書の建物所在地欄に番号が記載されています。これは「家屋番号」と呼ばれるもので、登記されている建物についています。
② 法務局で確認
最も確実な方法です。
この場合、建物が所在する法務局の戸籍課で、登記簿(全部事項証明書)の交付申請を行います。これが取れれば登記がされていることになります。取れなければ未登記ということです。
なお、この際には本人確認のために運転免許証・健康保険証・パスポート・マイナンバーカードなどが必要になります。また、インターネットによるオンライン交付申請も可能です。
未登記建物を解体する業者を探すポイント
未登記の建物であっても解体はできます。
また、「未登記建物はこの資格や認可を受けた業者でなければ行えない」というような条件もありません。
あえていえば、解体工事中に施主様の都合によって工事を中断するようなことが考えられます。それは、未登記建物の登記手続きのタイミングや進捗、相続問題対処とそれに付随する建物登記への影響などからです。
そのような場合、どうしたらいいか、どのような対処法があり、どのような届け出が必要か、などを率直に相談し、誠実にアドバイスや対応をしてくれる業者を選ぶことがとても大切です。
このことを踏まえながら、他の登記した建物を解体するときと同様のポイントで業者を選んでください。そのポイントについて解体工事費用とともにこちらのコラムで説明していますので、是非、参考になさってください。
まとめ
建物や土地の登記・未登記の問題は、相続などに際してよく問題にあがることです。逆に、不動産を新たに入手した際には、費用や忙しさなどから登記のタイミングを逸してしまうことがあります。
しかし、そうなるとさまざまな問題が起こってくることを、今回のコラムでご理解いただけたのではないでしょうか。
解体工事を検討したり、実際に開始のために動き出したりしたタイミングで、そういった問題に直面することはよくあります。
そんなときは、ぜひマトイにご相談ください。
マトイはいつでも、施主様の「困った!」「わからない!」といったことに一緒に考え、ベストな対策をご提案します。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
どんな些細なことでも丁寧にお答えいたします。お気軽にお問い合せください。
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