解体業スタート! 許可の取り方と必要な資格などをご紹介
かいたいコラム 「解体業スタート!」と始まった今回のコラム。ご覧になった方は、「いやいや、解体業を始めるのではなくて……」と思われたかもしれませんね。
私たちは解体作業を通して、施主様のより良いパートナーになりたいと常に願っており、そのために施主様にも私たちのことをご理解いただけたら……といった思いがあるため、今回はこちらのテーマを選んでみました。
解体業を始めるために必要な2つの許認可
自動車を運転するのに運転免許証が必要なように、事業を始めるためにも免許や許可・登録等が必要になります。それは解体業においても同様です。
解体業を始めるには、「解体工事業許可」か「解体工事業登録」のいずれかが必要になります。はじめに、それぞれについて説明します。
建設業許可における解体工事業許可
解体工事業許可は、建設業法といった法律に基づいた建設業許可の1つです。
建設業許可には、「土木一式工事」「建築一式工事」を筆頭に「とび・土工・コンクリート工事」、「屋根工事」などを含めて29種類あります。
この建設業許可の1つに解体工事業があって、これを取得することによって解体業としての事業活動ができるようになります。
さらに建設業は、その許可区分として「一般建設業」と「特定建設業」の2つがあり、請負金額の制限や配置すべき技術者が専任であるか否か等の違いがあります。
なお、建築業許可には都道府県知事へ許可申請を行って取得しますが、複数の都道府県にまたがって営業所を設置する場合は、国土交通大臣へ許可申請を行います。
解体工事業許可を取得するための5つの要件
解体工事業許可を得るためには、次の要件を満たしたうえで申請手続きを行う必要があります。
解体工事業者での役員や個人事業主としての経験が5年以上
この要件のポイントは、「経営経験の有無」です。
「建設会社の役員としての経験」をもっていること、もしくは「個人事業主として5年以上の経験を積んだ実績」をもっていることといった経営の経験が必要とされています。
法人として解体業を始める場合は、役員のうちの1人以上がこの経営経験をもっていることが必要です。また、個人事業主となる場合は、その人が前述の2つの経験のいずれかに当てはまることが必要とされます。
解体工事業に関する資格または10年以上の実務経験が必要
ここで必要となる「解体工事業に関する資格」とは、次の資格です。これらの資格のいずれかをもつ人物が社内にいればこの条件は満たされます。
*1級土木施工管理技士
*2級土木施工管理技士(種別は「土木」)
*1級建築施工管理技士
*2級建築施工管理技士(種別は「建築」「躯体」)
*技術士:21部門あるなかの建設部門および総合技術管理部門
*技術士:建設部門中の「鋼構造およびコンクリート」、総合技術管理部門中の「建設-鋼構造およびコンクリート」
*技能検定1級「とび・とび工」
*技能検定2級「とび・とび工」(合格後3年以上の実務経験が必要)
*解体工事施工技師試験合格
なお、これらの資格を有していない場合、解体工事の実務経験が10年以上あればこの条件を満たすものとされます。
さらに、解体工事と重複しない期間に建築一式工事やとび・土木工事等の実務を一定年数経験している場合には特例として、この要件をクリアできる場合があります。
また、土木工学、もしくは建築学に関する学科の卒業者は、実務経験が短かったとしても10年以上の実務経験をクリアしたとみなされます。
誠実性がある
ここでの「誠実性」とは、契約の締結や実務の履行に際しての誠実さです。めったにあることではありませんが、過去に不正や誠実さに欠くような行為を起こしたことがあり、再び同様の可能性があるような場合は許可を取得できません。
500万円以上の資金力
着実に事業運営を行うためには、ある程度の資金力が必要です。そのために「預金高が500万円以上あることが確認できる銀行口座の残高証明書」、もしくは「500万円以上の自己資本が確認できる財務諸表」で資金力を証明します。
この要件で問われているのは、その人に「資金調達の能力」があるか否かです。そのため、もしも500万円が手元になかったとしても、借りて500万円を口座に入金して残高証明書を発行したものでも認められます。
欠格要件に該当していない
欠格要件に該当するものとして、「成年被後見人、もしくは被保佐人または破産者で復権を得ない者」であることをはじめとし、不正行為による営業停止処分や営業禁止処分、禁固刑以上の刑を受けて所定の年数を経過していない、などが欠格要件として挙げられます。
個人事業主、法人の役員等を務める人物が次に挙げる欠格要件に1つでも当てはまるような場合、許可は得られません。
解体工事業許可取得に必要な手続き
解体工事業の許可は、各都道府県の県庁等にある申請窓口に出向き、必要書類と申請手数料を支払って申請します。
ただし、申請書類の作成はかなり準備が大変なため、専門の行政書士に委託する法人や個人事業主の方々が多いようです。
東京都における解体工事業許可取得に必要な手続き
ここでは手続きの具体的な点について、東京都を例に説明します。都道府県によって手続きの内容に若干の違いがあると思われますが、おおむね他の自治体も同様に進められます。
【申請の流れ】
① 申請書類等の必要書類を入手。
② 欠格要件に該当するか否かを確認。
③ 書類作成。
④ 東京都庁建設業課に書類を提出。
⑤ 申請手数料の支払い
⑥ 許可通知書の到着。
【登録手数料】
新規の場合は90,000円を現金で納入。
【申請に必要な書類】
役員等に関する証明書、常勤役員等の略歴書、専任技術者証明書、実務経験証明書、指導監督的実務経験証明書、許可申請者の住所・生年月日等に関する調書、事業税の納税証明書(法人の場合)もしくは事業税の納税証明書(個人の場合)等。
【登録を受けられない(拒否される)条件】
* 許可申請書もしくは添付書類の重要な事項に虚偽の記載や重要な事項の掲載が抜けている。
* 法人役員もしくは個人、法定代理人等が破産手続き開始から復権を得ていない。
* 一般建設業の許可または特定建設業の許可を取り消され、取り消しの日から5年を経ていない。
* 一般建設業の許可または特定建設業の許可を取り消され、取り消しの処分に係る聴聞通知を受け取った後、廃業の届け出から5年を経ていない。
* 建設業法により営業停止を命ぜられ、その停止期間が経過していない。
* 暴力団員でなくなった日から5年を経ていない。
* 心身の故障により建設業を適正に営むことができないと国土交通省で定めるもの。
* 暴力団員等がその事業活動を支配するもの、等々。
建設リサイクル法による解体工事業登録
解体工事業登録は建設リサイクル法を根拠とするものです。
解体工事を行う場所の都道府県知事に申請し、登録することでも解体工事業を行うことができます。なお、複数の都道府県にまたがって解体工事を行う場合は、それぞれの自治体に登録が必要です。
また、解体工事業許可では解体を請け負う際に請負金額に制限はありませんが、解体工事登録では500万円未満のものとなります。
建設リサイクル法についてはこちらのコラムをご参照ください。建設リサイクル法をはじめに、解体に際して必要なアスベストや各種届出についても説明してます。
解体工事業登録申請のための2つの要件
解体工事業の登録を受けるためには、「基準を満たした技術管理者の配置」、「登録の拒否事由に該当するものがない」といった2つの要件を満たす必要があります。
基準を満たしている技術管理者を配置
国土交通省令で定める要件に適合したもので、工事現場における解体工事の施工上の技術管理者を配置する必要があります。
技術管理者としての要件は、実務経験と資格のいずれかの要件権を満たす必要がありますが、具体的には都道府県によって異なります。
登録拒否事由に該当していない
登録申請においては、それを受け付ける各都道府県が登録を受け付けない条件を設けています。1つでもそれに該当するものがあれば、申請しても登録は認められません。
東京都における解体工事業登録に必要な手続き
ここでは手続きの具体的な点について、東京都を例に説明します。都道府県によって手続きの内容に若干の違いがあると思われますが、おおむね他の自治体によっても同様に進められます。
【申請の流れ】
① 必要書類を入手。
② 登録条件の確認。(条件を満たしていないと、申請しても登録されません)
③ 書類作成。
④ 書類一式を東京都都市整備局市街地建築部建設業課の窓口に提出。
⑤ 登録が完了した解体工事業者は、営業所および解体工事現場ごとに、省令で定める事項(商号・名称または氏名・登録番号等)を記した標識を掲げ事業活動を行う。
なお、登録の有効期間は5年間で、継続して事業を営む場合は、有効期間満了の2か月前から30日前までに更新の手続きをします。
【登録手数料】
新規の場合は45,000円を現金納入します。
【申請に必要な書類】
① 解体工事登録申請書:商号・名称または氏名および住所、営業所の名称及び所在地、法人の場合は役員氏名、未成年の場合は法定代理人の氏名および住所、技術管理者の氏名等を記入。
② 誓約書:登録申請に当たって、登録を受けられない条件として示されている事項に該当していないことを誓約する書面。
③ 登録申請者の調書:登録申請者が法人の場合、法人としての本人の調書(法人の沿革)と法人の役員の調書を作成して提出。
④ 技術管理者の資格等を証明する書類
⑤ 申請者の身分等を証明する書類
⑥ 役員等氏名一覧
⑦ その他の状況に応じて必要な書類:営業所が登記されていない場合や、営業所が住民票と異なる場合に、営業所の使用権限が確認できる書類。
【登録を受けられない(拒否される)条件】
① 解体工事業の登録を取り消された日から2年を経過していない。
② 解体工事業の業務停止を命ぜられ、その停止期間が経過しない。
③ 解体工事業の登録を取り消された法人において、その処分日の前30日以内に役員であり、かつその処分日から2年を経過していない。
④ 建設リサイクル法に違反して罰金以上の刑罰を受け、その執行が終ってから2年を経過していない。
⑤ 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない。
⑥ 解体工事業者が法人の場合で、役員のなかに上記の1~5のいずれかに該当する。
⑦ 解体工事業者が未成年で法定代理人を立てている場合、法定代理人が上記の1~5のいずれかに該当する。
⑧ 技術管理者を選定していない。
⑨ 暴力団員等がその活動を支配する。
【配置すべき技術管理者の要件】
東京都の場合は、表にあるような要件となっています。
『解体工事業者登録申請等の手引』(令和5年6月改定)P.2より引用
その他、解体作業に必要な許可・資格
ここまで解体工事業を始めるために必要な許認可について説明してきました。その他、実際に解体工事を行っていくためには、さまざまな専門知識・技術、それに伴う許可や資格が必要になります。
産業廃棄物収集運搬業許可
解体工事では多くの廃棄物が排出され、それらは産業廃棄物として処分場に運ばれて処分されます。その際、現場での廃棄物を収集し、処分場まで運搬するのに必要な許可が「産業廃棄物収集運搬業許可」です。
この許可は各自治体に申請し取得するもので、有効期間は5年間となります。
解体工事を実際に行う業者のなかには、この許可をもっている業者と持っていない業者がいます。もっていない場合は、この許可を所有している収集・運搬業者に依頼することになります。
なお、こちらのコラムでは産業廃棄物収集運搬業許可をはじめ、解体工事における許可・登録・届け出等について解説しています。こちらも、どうぞご覧ください。
足場の組み立て等作業主任者
解体工事はもちろんのこと建築工事全般にわたって設置される足場は、その安全性を確保するために必要不可欠なものです。
「足場の組み立て等作業主任者」はこの足場の組み立てや解体作業に必要な国家資格です。一定の足場を作る際、この資格の保有者が作業を指揮します。
資格取得には、次の3つのどれかの条件を満たし、講習を受講した後、修了試験に合格する必要があります。
* 高校・大学・専門学校等で土木・建築に関する学科を専攻した後、2年以上足場作業に従事
* 足場作業に3年以上従事
* 厚生労働大臣が認めるもの
足場にはさまざまな種類があって、現場の特徴や工事内容によって使い分けています。それらを正しく使い分けること、取り扱いを的確に行うことによって工事の安全性はより高まります。それらについて、こちらのコラムで詳しく解説していますので、どうぞご一読なさってください。
ガス溶接作業主任者
ガス溶接作業は金属を溶断・加工するための作業です。これもまた解体工事現場では欠かせない作業といえます。とくに鉄骨造や鉄筋コンクリート造の縦のものを解体する作業では、必ずといっていいほど必要な作業です。
「ガス溶接作業主任者」は労働安全衛生法に基づく国家資格である作業主任者の1つであり、この資格を取得するには、溶接技術を学んだ経験、もしくは溶接作業の実務経験の証明が必要になります。
建設機械施工技師
この資格は、建設や解体で扱う機械の操作技術やその実務経験をもつ人に与えられる国家資格です。
この資格保有者は、現場監督、大規模な現場の専任技術者、主任技術者、監理技術者を務めることができます。なお、資格には1級と2級がありますが、1級になると扱う機械の制限がなくなり、仕事の幅が広くなります。
石綿作業主任者
アスベストともいわれる石綿は、その健康への悪影響が判明して2006(平成17)年には使用禁止になりました。しかし、既存の建物のなかにはまだまだアスベストの吹き付けやアスベストを含有した建材を使用しているものが多数あります。
そのため、解体工事や大規模な改修工事などに際しては、アスベストの使用の有無を調べる事前調査が義務付けられています。それによってアスベストの使用が確認されたら、この「石綿作業主任者」が中心となって作業者やその周辺の人々がアスベストにばく露されないように作業方法を決定し、その指揮を執るほか、排気装置や換気装置の定期的な点検および保護具の使用状況の監視などを行います。
2日間にわたる講習を受講し、最後に行われる修了試験に合格することで石綿作業主任者資格が得られます。
なお、マトイではこちらの石綿作業主任者を営業全員が保持しております。アスベストについて疑問に思うことなどがありましたら、どうぞ、お気軽にご連絡ください。
マトイ無料ご相談・お見積りフォーム
アスベストの事前調査およびアスベストの関連情報については、こちらのコラムでも解説しています。どうぞ参考になさってください。
クレーン運転士
解体工事ではさまざまな重機を使用する機会が多くあります。その際に必要なのが「クレーン運転士」の資格です。
クレーン運転士の資格には、運転できるクレーンの種類によって次の4種類があります。
* クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定無し)
* クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)
* クレーン運転士免許(床上運転士クレーン限定)
* 移動式クレーン運転士免許(すべてのクレーンが運転可能)
重機は解体工事において欠かせないアイテムであり、さまざまな種類があります。現場の特徴や状況に応じて緻密な操作を行うことで、騒音や振動による現場周辺への影響を配慮しています。
こちらのコラムでは、そういった重機の構造や取り扱いに際しての私たち業者の配慮等を解説しています。どうぞお読みください。
まとめ
解体業者を選ぶ際の第1チェックポイント、それは「解体業許可」や「解体業登録」を所有しているか否かです。これらの許認・登録を行って事業活動を行うのは当然のことで、ほとんどの業者がどちらかの許認可を得ているはずです。しかし、なかにはそうではない業者もいますので、確認が必要です。
本文中でも触れている許認可取得の欠格要件をご覧いただけるとわかるように、許認可を得て事業活動を行っている業者は、資金力、人材の履歴、過去の罰則など、いくつものチェックを自治体によって受けています。それだけ“信頼”していただけるということです。
今回、取り上げた許認可や業務に付随する資格等の情報を、業者選びの際に活かしていただけたら幸いです。
なお、マトイではこれらの人材をそろえ、無料見積りの段階から皆様のご要望に応えられるように研鑽を重ねています。どうぞ、お気軽にお声をかけてください。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
どんな些細なことでも丁寧にお答えいたします。お気軽にお問い合せください。
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