東京の空き家問題はどうなる? 補助金や東京都の取り組みについて
かいたいコラム 空き家が社会問題になっています。空き家は地域社会にもさまざまな影響を及ぼすことから、自治体でもより積極的な対策に臨んでいます。
皆さんが暮らしている地域のなかにも空き家を見かけることがあるのではないでしょうか? 近所に空き家がある人は、その管理状態が気になるかもしれません。まして空き家を所有している方にとっては、管理と併せて行政の対策の行方も気になることでしょう。
空き家のいろいろ、問題になるのは……?
「空き家」といっても、詳しくみるとその状態によっていくつかの種類に分かれています。
空き家の定義
そもそも空き家とは、当然のことながら“住む人がいない状態にある家”をいいます。
その理由を詳しくみていくと、次の4種類に分かれます。これをみると、その理由から空き家の状態がずっと続いているわけではなく、ある程度の期間に限られているものと、そうでないものとがあります。
知っておきたい空き家の種類
では、空き家の種類について説明します。
二次的住宅
普段は人が住んでいないものの、週末や休暇などの時期には一時的に使用する状態にある家を指します。いわゆる「別荘」や「セカンドハウス」と呼ばれるもの。利用するタイミングや時期はそれぞれに異なりますが、不定期ではあるものの利用することがある状態です。
しかし、この状態は“居住”しているとはいえないために、分類上は空き家とされています。
賃貸用の住宅
人に貸すためにある住宅です。居住者はいないものの借主が見つかり次第、利用されることが前提にある空き家です。
売却用の住宅
売却物件として売り出す予定の家で、買い主を探している状態にある家です。こちらも、買い主が見つかれば、なんらかの形で利用されて空き家の状態ではなくなります。
問題になっている、“その他の住宅”
4番目の空き家は「その他の住宅」で、上記のどれにも属さない空き家です。要するに自分たちでときどきでも使ったり、人に貸したり、売却したりする予定のない家。
この場合、家が老朽化やなんらかの理由で破損した場合、それを修理したり、建物はもちろん庭や家屋の周辺が衛生的な状態を保たれるために適切に管理されていない状態です。それによって不衛生な状態を引き起こしたり、不法侵入者や害虫・害獣が住み着いたり、近隣へなんらかの害を及ぼしたりします。空き家が社会問題視されている根本的な理由は、これらの点にあるとされています。
相続などで思いがけず所有者となった場合、その家屋が想像以上に老朽していたり、家のなかが荷物でいっぱいになっていて、解体しようと思っても何から始めたらいいのかわからないときがあります。
そのようなときはマトイにご相談ください。マトイでは解体工事とともに不用品の回収・廃棄なども行っていますので、解体工事の前段階からお手伝いできます。
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他人事ではない空き家問題-東京都足立区を通して
ここに挙げた次のグラフは、2019(令和1)年9月に総務省から発表されたものです(『平成30年 住宅・土地統計調査』住宅及び世帯に関する基本集計結果の概要より)。これから見てわかるように、空き家率の数は年々増加して2018(平成30)年度は過去最高を示しています。
空き家率の内訳をみると、賃貸用が432万7千戸(総住宅数に占める割合 6.9%) 、売却用が29万3千戸(同 0.5%)、二次的住宅が 38万1千戸(同 0.6%),「その他の住宅」になると348万7千戸(同 5.6%)となっていました。これは2013(平成25)年時の結果と比べると、売却用と二次的住宅が減少するなか、賃貸用は5千戸(0.8%)増加、「その他の住宅」は30万4千戸で9.5%増加しています。
空き家の増加を考える際、過疎化が問題となっている地方のことと思いがちですが、空き家増加は日本全国にわたる問題で、東京都においてもみられています。
総務省ホームページより流用
空き家の実態を表す2つの視点
空き家の実態を知るには単に空き家であることとともに、躯体の腐朽および外壁や雨どいなど付帯設備等が損傷しているような空き家も含めます。これは建物自体が倒壊したり、それによって周辺の人々に危険を及ぼしたりする可能性があるからです。そして、その地域における空き家の密集度も合わせ見ることが大切です。
この2つの視点から、東京都の空き家の実態を見てみましょう。
空き家の件数
まず東京都では、平均を50として空き家の偏差値を見たとき、60以上を示す地域が次の表のようになりました。
上位に挙がっている足立区や八王子市は、他の地域と比べて空き家が多いわけではなく、腐朽・破損が見られる建物の数が多いことが関係した結果です。
なお、ここに挙がっている地域を見てみると、空き家問題に都市部・郊外の関係がないことがわかると思います。
市 区 | 総 数 | 腐朽・破損あり | 偏差値 |
足 立 区 | 3,580 | 1,790 | 76 |
八王子市 | 4,340 | 1,460 | 76 |
世田谷区 | 4,440 | 1,000 | 70 |
練 馬 区 | 3,450 | 1,170 | 68 |
杉 並 区 | 3,150 | 1,080 | 65 |
板 橋 区 | 2,540 | 1,210 | 64 |
江戸川区 | 3,810 | 630 | 63 |
墨 田 区 | 2,280 | 1,030 | 61 |
北 区 | 2,660 | 860 | 61 |
葛 飾 区 | 2,370 | 970 | 61 |
空き家の密集度
空き家については、単に面積だけで現状を判断できるものではありません。面積が広い地区では家も多くなり、空き家も多くなる傾向があります。このことから、面積の広さを除外して空き家の実態を知るために、1k㎡当たりの空き家の数を算出したのが密集度です。
これを見ると、もっとも密集しているのが墨田区です。その後に台東区、豊島区、荒川区、北区が続き、東京23区の北側地域の密集度が高くなっていることを示しています。さらに腐朽・破損ありの空き家は、続く台東区と比べると約1.5倍になっています。
ちなみに空き家の件数で、その偏差値が最も高かった足立区は、1k㎡当たりの空き家数は67.2件で密集度の偏差値は56です。
狭い地域に空き家が密集している状態は、街の景観を損ねたり、治安の悪化を招いたりして、その地域の人々の暮らしに影響を与えます。
市区 | 1k㎡当たりの空き家数 | 腐朽・破損あり | 偏差値 |
墨 田 区 | 165.6 | 74.8 | 83 |
台 東 区 | 124.6 | 51.4 | 69 |
豊 島 区 | 115.3 | 50.7 | 68 |
荒 川 区 | 156.5 | 34.4 | 68 |
北 区 | 129.1 | 41.7 | 67 |
その他の空き家が地域にもたらす影響
空き家が問題視される一番の理由は、人々の暮らしに次のような負の影響を与えるためです。
① 腐朽や破損、それによる建物の倒壊などによって、周辺を通る人や暮らす人々の安全を脅かす。
② ゴミの不法投棄や害虫・害獣が住み着くなどにより、衛生環境が悪化する。
③ 不審者の侵入やたまり場となって治安が悪化する。
④ 老朽化した部分の管理不行き届きなどによる漏電や放火などの危険性が高まる。
⑤ 周辺の景観の悪化を招く。
このような管理が不十分な「その他の空き家」は地域社会や近隣住民にもさまざまな影響をもたらします。それは最終的には所有者にも大きな不利益を与えることになりかねません。こちらのコラムでも説明をしていますので、どうぞお読みください。
東京都足立区にみる空き家の現状と対策
【足立区の空き家の現状】
前述の東京都内の空き家の件数および密集度を見ると、件数では東京都23区内では足立区が上位を示しています。しかし、1k㎡当たりの密集度では67.2(偏差値56)で上位に挙がっている墨田区の165.6(偏差値83)よりかなり低くなっています。
また2015(平成27)年に実施した足立区独自の調査によって、北千住駅東口エリアに空き家と思われる建物が多く分布していることが分かりました。
【足立区の空き家対策】
足立区では、空き家対策として次のような取り組みを実施しています。
*空き家無料相談会の実施
空き家に関する区民の困りごとについて、不動産事業者や建築士、司法書士などの専門家が相談員となって話を聞き、後日、無料で解決方法を提案してくれる(対面とオンライン相談もあり)。予約制で1組30分程度。
*「協創プラットフォーム」を立ち上げて空き家利活用を促進
2017(平成29)年11月から3年間のモデル事業として「北千住駅東口エリア」を対象に「協創プラットフォーム」を立ち上げて、空き家の利活用を地域に展開。モデル事業終了後も、その取り組みを継続。
*老朽家屋等解体工事助成
危険な老朽家屋として「足立区老朽家屋等審議会」が「勧告すべきもの」とした建物について、老朽家屋等解体工事助成を実施。
*「足立区生活環境の保全に関する条例」に基づくゴミ屋敷対策事業
近隣にあるゴミ屋敷によって迷惑や心配を感じている区民、自宅がゴミや荷物に溢れて困っている人の相談に生活環境保全課が対応し、区職員が解決までサポート。
東京都墨田区にみる空き家の現状と対策
【墨田区の空き家の現状】
墨田区は空き家の数が都内のなかでも多く、しかもその他の空き家の半数以上が一戸建の「その他の空き家」は、 半数以上が腐朽・破損がある状態です。また1k㎡当たりの空き家数が多く密集度も高い状況です。これは周囲に及ぼすリスクも高いといえます。
【墨田区の空き家対策】
*空き家の発生・危険化の予防
空き家等ワンストップ相談窓口の開設や利活用セミナーの実施、相続等に係る相談機会の提供、空き家所有者に向けて情報発信し、空き家所有者の意識啓蒙を図るなどを行う。
*空き家の利活用
利活用セミナーの実施、街づくり等の活動を行う民間団体等や行政の事業に空き家を活用するなどのほか、寄付として空き家を受け取ることについても検討。
*老朽危険家屋除却費等助成制度
老朽建物等が住宅地区改良法に規定する「不良住宅」に該当する場合に、除却工事費の2分の1(上限50万円)を助成。
*土地を墨田区に無償貸与することを前提とした除却費用の助成
管理不全によって危険な状態になっている建物について、その建物を除却後に跡地を原則として10年間、墨田区へ無償貸与することを条件に200万円を上限として除却費用を助成。
空き家増加の背景
空き家が増加している背景には、さまざまなものがあります。
その1つとして挙がるのが、所有者が1人暮らしの高齢などの場合、介護施設などに入所することで空き家状態になってしまうことです。さらに親やその他の親族などから家を相続したものの、すでに自分の住まいを構えている場合、相続した家は空き家状態になってしまう可能性が高くあります。
こうしたケースでは、所有者に代わって管理を任される人や相続人となった人には、空き家状態になった家を管理するための肉体的負担、精神的負担、経済的負担がかかり、管理が不十分となることがあります。
さらに空き家となっている家屋を処分することで、それまで受けられていた固定資産税等の優遇措置がなくなることで税金が高くなります。そのために、節税のために空き家状態の家をそのままにしておく、という事情も空き家の背景にはあります。
これは先に取り上げた足立区や墨田区だけのことではなく、全国的な問題となっており、みんなでその対策に取り組むことが大切です。
空き家所有者が知っておきたい空家対策特別措置法と空き家対策
空き家が大きな社会問題となっている現在、社会全体でその対策に取り組んでいます。その基盤になっているのが、空家対策特別措置法です。
空家対策特別措置法の改正で、より厳しくなる空き家管理
空き家は周辺環境にマイナスの影響を与えるとともに、今後も増える可能性があるため、国としてより積極的にその対策を進めていくために空家対策特別措置法が2015(平成27)年に施行されました。これによって適切に管理されていない空き家に対して、自治体が適切な管理や活用を促します。
この法律に基づいて、管理に問題がある空き家を「特定空き家」に指定して所有者に対して管理の助言・指導・勧告・命令を行ったり、所有者確認のために戸籍や固定資産税台帳などの個人情報を確認したりできるようになっています。
空家対策特別措置法とその改正内容については、こちらのコラムで詳しく説明しています。とくに空き家所有者の方には大切な情報ですので、どうぞお目通しください。
特例措置の見直し傾向
空家対策特別措置法が施行されたのちも、空き家は増加傾向が続いています。
そのため、国と自治体は法の改正を行いながらより積極的に空き家対策を推進しています。その1つとして注目すべきものが特定空き家に続いて、「管理不全空き家」が制定されたことです。
管理不全空き家は特定空き家の前段階となる状態で、特定空き家同様に助言・指導・勧告が行われ、特定空き家の状態になることを防止します。
ぜひとも避けたい特定空き家と管理不全空き家の指定
特定空き家も管理不全空き家もそれぞれに指定されることで、固定資産税等の減額措置を受けられなくなってしまいます。さらに特定空き家においては、最悪の場合、解体工事が行政代執行され、高額な費用を請求されることになります。
ぜひとも空き家管理をしっかり行い、特定空き家や管理不全空き家の指定を避けるようにしましょう。
こちらのコラムでは特定空き家指定を避けるための対策等について説明しています。こちらもどうぞお読みください。
積極的に検討したい、空き家の対処
今後も国や自治体の空き家対策はより積極的になってくると思われます。
対策としてはいろいろとあるものの、まずは「利活用する」ことと、「解体する」ことの二択になります。この選択は、所有者の方々のライフスタイルや将来を見据えたライフプランに大きく関係し、すぐに決めかねることでしょう。そのため時間がかかるとしても、対処の方向性が決まる間も、適切に管理することが大切です。
いずれにしても空き家を所有している方は、所有している間は適切かつ継続的な家屋の管理と、早めに空き家の対処法を検討して実行することをお勧めします。
こちらのコラムでは、空き家の活用に関する情報をまとめています。どうぞ参考になさってください。
東京都に見るさまざまな空き家対策
空き家に対して、東京都では次のような取り組みを行っています。ご自身の空き家対策の検討および対処の参考になさってください。
【相談窓口の設置】
*空き家ワンストップ相談窓口:空き家所有者等(都内・都外に空き家を所有する人)および都内の空き家活用を希望する人を対象。
*専門家団体相談窓口:都の「空き家の有効活用、適正管理等の推進に向けた専門家団体等との協定」を締結した、不動産・建築・法律等の専門家団体、および金融機関の専門家団体による相談窓口。
*区市町村担当窓口:区市町村が行う空き家対策の担当窓口。
空き家対策に積極的に利用したい補助金
空き家の解体工事に際しては、さまざまな自治体が助成金・補助金制度を設けています。これを積極的に利用することで、空き家の解体工事等の経済的な負担を軽減できます。
ただし、助成金・補助金制度があるかどうか、その内容と申請要件などは自治体ごとに異なります。解体工事の検討を始めた早い段階から情報を集めて検討するといいでしょう。なお、以下に助成金・補助金を申請する際に共通する留意点を挙げておきます。
・空き家の所有者や相続人が申請。
・固定資産税等の税金を滞納していない。
・反社会的勢力等との関係がない。
・業者との契約や工事着工に至っていない。
・家屋全体を解体撤去する。
・自治体によって申請期間が異なり、その年度の予算に到達した段階で申請受付を締め切るので、早めに情報を入手して申請準備をする。
助成金等については、こちらのコラムでも詳しく説明していますので、お目通しください。
まとめ
本文中でも触れていますが、空き家の所有者の方にとって空き家対策は「利活用」するか「解体」するかの二択です。
思い出の詰まった実家や親族の方から相続した家に手を入れることは、なかなか決断できにくいことです。もしも判断ができずにいた場合は、管理不全空き家や特定空き家にならないように、適切に管理して維持していく必要があります。
大きな社会問題として取り上げられている空き家に対しては、今後もさまざまな施策が講じられ、所有者の方にとっては漫然と維持し続けていくことは難しい状況になるかもしれません。
マトイでは解体工事はもちろんのこと、その後の土地活用等についてのご相談にも対応しています。「あの空き家をどうしよう」という時は、どうぞマトイにご相談ください。より良い選択に向けてのサポートをいたします。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
どんな些細なことでも丁寧にお答えいたします。お気軽にお問い合せください。
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