知っておきたい、解体工事における許可・登録・届出について
かいたいコラム 事業を行うには、それに関する許可や登録が必要です。それは解体業においても同様。また、その実務ではさまざまな届け出も行うようになります。
当コラムでも、解体工事に関しての許可や登録、解体工事の際に必要な届け出について、その都度説明してきました。今回は、それらをまとめて、1つ1つ説明していきます。
皆さまにこれらを知っていただくことは、解体業を理解していただくためにも、そして不動産購入や建て替えなどの際に解体工事が必要となった際に、よりよい解体工事業者を選び、納得のいく工事を行うことにも役立ちます。
許可・登録・届出の違いについて
よく「許認可」とひとまとめにして使う許可や登録。何かを行う際に必要な許可や登録などを一般的にまとめてそう表現していることがあります。
では、その1つ1つはみんな同じ意味かというと、正確には違いがあります。その違いを知らなくても、困ることはあまりないと思いますが、違いを知っておくと役に立つことがあるかもしれません。
【 許 可 】
本来、無許可で行うことを禁止されている事業を、その事業者となる者が国や自治体に申請し、審査に通ることでその事業行為ができるようになること。審査に通らなければ、許可は得られず、その事業は行えません。
【 登 録 】
必要な書類をすべて整えて、国や地方自治体に提出することで、帳簿に記載してもらいます。これは必要書類がきちんと揃っていれば登録してもらえます。
登録によっては、実地調査があったり、登録手数料が必要であったりする場合があります。
【 届 出 】
事業者は、その事業内容を国や地方自治体に届け出る必要があります。これは監督官庁である国や地方自治体が、それぞれの事業活動を監督しやすくするためにできた仕組みです。
届出には、必ず出さなければならない「必須」のものと、「任意」として事業者の判断に任されるものがあります。
なお、許可、登録、届け出といった3点のほかに、似たようなものとして「認可」「免許」といったものがあります。
【 認 可 】
申請を申請した事業者に対して、国や自治体などの認可先が定める一定の基準を満たしていることを認めることです。その基準を満たしていれば、必ず認可されます。
【 免 許 】
業務を行う資格の有無を認めるもので、講習や試験などによって法律で定められた要件を満たしていることを証明された場合に認められます。
自動車運転免許があります。これは「免許」という文言を使っていますが、法律上は「許可」の扱いです。このように通称として「免許」といっていても、法理上の扱いが異なる場合があります。
解体工事業を行うために必要な許可・登録
解体工事業者として仕事を行っていく場合、もちろん無許可では仕事を請けることができません。きちんとした解体工事の事業者として依頼を請け、仕事を行っていくためには、「建設業許可」か「解体工事業登録」のいずれかが必要です。
建設業許可
建設業許可の対象となる業種は、建設業法によって29の業種があります。そのなかの「建設工事業」、「とび・土工工事業」のいずれか1つの許可が必要です。この許可で事業を行う場合は、請負金額の制限はありません。
なお、解体工事登録か次に説明する建設業許可のいずれかを取得していれば、解体工事事業者として仕事ができます。
解体工事業登録
これは建設リサイクル法で定められた登録制度で、この登録をすることで請負金額500万円未満の工事を請け負えます。
ただし、これは都道府県知事の登録制度のため、現場の都道府県ごとに事前登録をすることが必要です。
なお、こちらのコラムでは建設業許可や解体工事登録をはじめ、解体工事に必要な資格や工法などの基本的な情報をまとめています。どうぞあわせてお読みください。
解体工事業としての幅を広げる許可
解体工事は単に建物等を解体して終了するものではありません。その前の準備はもちろん、近隣住民の方々の日々の暮らしに配慮した取り組み、環境保全のための廃棄物の分別から処分など、さまざまなことを行います。できれば、それらを1社が通して行った方が効率もよく、費用の無駄も少ないと思われます。
解体工事のなかでも、とくに大切で多くの費用負担を占めるものが廃棄物の処理に関するものです。これには“収集・運搬”および“処分”といった過程で必要とされる許可をもって、適切に行うことが求められています。
これらを1業者で対応できればいいのですが、そのための条件が整ってない業者は、他の業者に依頼することになります。そうなると、時間的にも経済的にも負担の増加が起こりえます。この点においてマトイでは、産業廃棄物収集運搬業の許可を得ているため、現場で発生した産業廃棄物を処理場に運搬するまでを一貫して行えます。
できれば、工事の効率的な進行のためにも、業者選びでは次に説明する許可を得ている業者を選ぶことは、施主様の利便性も高めることにつながります。
産業廃棄物収集運搬業許可
産業廃棄物を処理施設等へ運搬することを業として行う際に必要となる許可です。
この許可は、施主様から直接解体工事の発注を受けて解体工事を担い(元請け業者となって)、そこで排出された廃棄物を処分する際には必要になりません。しかし、元請け業者から解体工事の委託を受けた場合(解体工事の下請け業者となった場合)、この許可が必要になります。
さらになんらかの理由によって自社で廃棄物の運搬を行えない場合は、他の運搬業者に委託することになりますが、その場合の運搬業者はこの許可が必要です。
なお、この産業廃棄物収集運搬業許可を得るためには、次の要件を満たす必要があります。
① 禁固刑を受けていたり、廃掃法に違反して罰金刑以上の処罰を受けていたりといった欠格要件に該当しない。
② 講習会を受講している。
③ 運搬のための車両、運搬用機、駐車場などの運搬施設が備わっている。
④ 経理的基盤を有している。
⑤ 事業計画を整えている。
実際の解体工事においてこの許可を必要としないケースであっても、許可を取得していることは、その事業者が一定の水準にあることを意味し、社会的信頼度が高いとみていいでしょう。
産業廃棄物処分業許可
産業廃棄物の処分を業として担っていくための許可で、市町村長または都道府県知事による許可となります。
産業廃棄物とされるものには20種類ありますが、その種類ごとに許可が必要です。また、上記の産業廃棄物収集運搬業許可と同じように許可を得るためには5つの要件が必要ですが、それによって十分な処理施設を所有していることが証明されるとともに、工事の始まりから廃棄物処分までの工事過程を一本化して、合理的に工事を進められます。
一般廃棄物収集運搬業許可
解体工事の際、家屋内にタンスやベッドなどの大型家具や電化製品等が残されている場合があります。こういったことは、施主様がご自身で廃棄するにはそのものが大きすぎたり、時間がなかったりして難しいなどの場合によく見られます。
この場合、解体工事で出る廃棄物とともに処分することも可能ですが、その場合は産業廃棄物として扱われ、廃棄処分費用がさらに高くなってしまいます。同じように処分するのでも、解体工事前に処分すれば一般廃棄物というくくりになって、産業廃棄物として処分するよりも費用を抑えられます。
そのため、残置物の処分の依頼を受けた解体業者は、一般廃棄物収集運搬業者に依頼するか、専用容器に残置物の詰め込みを行って収集運搬を業者に依頼します。
しかし、解体工事を依頼した解体工事業者がこの一般廃棄物収集運搬業の許可を取得していたら、一般廃棄物の収集運搬も一貫して行え、効率よく工事を進められます。
廃棄物の処分は、解体工事においても大きな課題です。廃棄物処分に関連する法律や正しい処理方法などについて、こちらのコラムでも説明しています。とても大切なことですので、どうぞこちらのコラムもお目通しください。
確実かつ安全な解体工事を行うための届出
免許や許可などのほかに、解体工事ではさまざまな届け出を行います。ここではそれらについて説明します。
建設リサイクル法に関する届け出
この建設リサイクル法は正式には「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」といいます。この法律では、建設工事全般を通して排出される廃棄物を有効に再資源化して、廃棄物の量を減らし、廃棄物を適切に処理することを目的としています。
●建設リサイクル法に関する届け出の対象となる条件
延べ床面積の合計が80㎡以上で、木材・鉄・アスファルトなどの特定の建材が使われている建物。
●届け出の期限
解体工事着工の7日前まで
●届け出に必要なもの
① 届出書。
② 分別解体等の計画。
③ 工程表。
④ 設計図または写真。
⑤ 現場の案内図。
届け出る自治体によってさらに必要なものがあったり、書式や用紙等が異なっていたりしますので、確認が必要です。
●届け出る人
原則として申請は施主様が行いますが、業者が施主様の委任を受けて行うこともできます。その際は、施主様からの委任状をもらう必要があります。
●その他
対象となる工事やその変更に違反があったり、分別解体等の義務や再資源化および廃棄等に違反があったりした場合は罰金等の処罰の対象となります。
アスベスト除去の届出
アスベスト含有の建材を使用した建物を解体する場合には、届け出が必要となります。これには、建設リサイクル法や労働安全衛生法、大気汚染防止法、廃棄物処理法などいくつかの法律が関係してきます。
●アスベストの使用レベルと届出
届け出はアスベストの使用レベルに応じて変わります。それぞれのアスベストの使用レベルと届け出の内容は次の通りです。
レベル1:発じん性が著しく高い(「石綿吹き付け材」がこれに当たる)
「届け出書」(建設リサイクル法)
「特定粉じん排出作業実施届」(大気汚染防止法)
「建設工事計画届」(労働安全衛生法)
「事前調査結果報告書」(大気汚染防止法、石綿障害予防規則)
いずれも事前調査を行い、その結果に基づいて事業者が届け出ます。
レベル2:発じん性がやや高い(「石綿含有保温材」「耐火被覆材」「断熱材」が該当)
「届け出書」(建設リサイクル法)
「特定粉じん排出作業実施届」(大気汚染防止法)
「建設工事計画届」(労働安全衛生法)
「建築物解体等作業届」(石綿障害予防規則)
「事前調査結果報告書」(大気汚染防止法、石綿障害予防規則)
レベル3:発じん性が比較的少ない(「石綿含有成形板」「ビニール床タイル」等が該当)
「届け出書」(建設リサイクル法)
「事前調査結果報告書」(大気汚染防止法、石綿障害予防規則)
特定粉じん排出作業や労働安全衛生法に関連する届け出はありませんが、アスベストを周辺に飛散させないように慎重に作業を行います。
●届け出の期限
大気汚染防止法による届け出や労働安全衛生法による届け出は、アスベスト除去工事開始の14日前までに届け出ます。
また、石綿障害予防規則に関するレベル2に対する「建築物解体同作業届」、および事前調査結果報告書はアスベスト除去工事開始前までに届け出ます。
●その他
解体工事現場がある自治体によって、さらに必要な届け出等が加わる場合がありますので、事前に確認してください。
アスベストの取り扱いは慎重を要します。そのため、解体工事において業者はもちろん、施主様もいろいろと行うべきことがあります。アスベストの基本情報やアスベストに対して行うべきこと等が、こちらのコラムにまとめられています。どうぞご覧ください。
建物除去届
建物除去届は、建物解体に際して建築基準法に則った届け出です。
●届け出の条件
工事部分の床面積が10㎡以内、または建て替えを目的とした解体工事では届け出の必要はありません。
●届け出の期限
解体工事の前日まで。
●届け出る人
原則として施主様が届け出ますが、業者に委託することも可能です。
建物滅失登記届
建物滅失登記届とは、その建物が解体されてなくなったことを登記するための届け出です。
●届け出の条件
この届出は、建物すべてを解体撤去した場合、建物が焼失した場合、過去に滅失登記しないまま建物は現存していないのに登記だけが残っている場合、などに行います。
●届け出の期限
建物解体から1か月以内に届け出ます。
●届け出る人
施主様(その建物の所有者)が行う届出ですが、委託することも可能です。その場合、多くは土地家屋調査士に依頼します。
建物滅失登記届は、相続やその後の土地の扱い等において重要なものです。こちらのコラムに手続き等を含めた詳細を説明していますので、こちらもどうぞご覧ください。
道路の使用許可
解体工事では、工事車両の出入りや足場などの関係で工事現場に隣接する道路の交通を妨げてしまうことがあります。その場合は、現場のある地域の警察署に「道路使用許可」を取ります。
この届出は、施主様が行っても業者が行ってもいいものです。が、多くの場合、他の届け出とともに業者が行います。
ライフラインの停止の届出
さまざまな届け出とそのための手続きが解体工事では必要になってきます。そのなかでも、ライフラインの停止は、工事そのものに直接影響を与えるものですので、確認しながら進める必要があります。
停止の届け出が必要なライフラインには、電気、電話等の通信機器、ガス、水道などです。基本的にこれらの停止作業は、施主様ご自身が電話等によって停止依頼を行います。しかし、水道については解体工事中にも使うことがあるので、水道の停止については業者と十分に確認し合ってから停止するようにしてください。
なお、ライフラインの停止を含めて、解体工事において必要となる事柄を、こちらのコラムにまとめてあります。ぜひお読みいただき、解体工事やそのプラン作りにお役立てください。
まとめ
今回取り上げたような各種届出について、実際にご自身がその1つ1つを行うとは限らないものの、どのような届け出が必要なのか、といったことを知っておくことで解体工事の全体像が把握できてくるでしょう。
とはいえ、何度も解体工事を経験している人でない限りは、出てくる用語1つ取ってみても馴染みの少ないもので、施主様としては大変なことと思います。
私たちマトイでは、最初のお問い合わせや無料お見積もりのご連絡をいただいた段階から、皆さまのパートナーとなって対応させていただいています。一緒によりよい方法を考え、お役に立つことを心掛けています。初めて見聞きする言葉1つでも、どうぞお気軽にお問い合わせください。そこから、よりよいプランへと広げていきましょう。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
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特定解体工事とは何? 地球環境のために慎重に行うこと
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