解体する? 再生する? 空き家の活用に迷ったときの情報箱。
かいたいコラム 親族の家を相続したけれどそのままになっている、転勤先に一軒家を購入したために最初に住んでいた家が空家になっていて戻る予定がない、といった事情を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか? ご本人やご家族にとってはそれぞれに思いのある家かもしれませんし、単に処分を決意するのも難しいかもしれません。しかし、毎年の固定資産税や維持費などを考えるとのんびりもしていられない……という気持ちにもなることでしょう。そんな方々に向けて、今回は空き家活用について、お役に立つ情報をまとめてみました。
「空家はうちには関係ないなぁ」と思っている方も、突然、家を相続することがあるかもしれません。そんな可能性を考えて、目を通してみてください。
身近に増える空き家の現状
皆さんは空き家が増えていることを身近に感じることはありませんか? 我が家の周り、およそ半径500m周辺でも空き家になった家が5~6軒あります。皆さんが暮らす周辺はいかがでしょうか?
増え続けている空き家
「空き家」とひとくくりにいっても、売却予定のものや貸家とか別荘などに使用する目的で管理されている状態で空き家になっているものと、使用目的がないままに適切に管理されていないものがあります。社会的に問題になっているのが、最後の「使用目的がないままに適切に管理がされていない」空き家です。
5年ごとに総務省が行っている「住宅・土地統計調査」の2018(平成30)年の結果をみると、空き家率は13.6%で調査開始以来最高の値になっています。また、この空家率は今後も上昇していくことが予測されています。
空き家をきっかけに起こるトラブル
では、なぜ空き家が社会問題になるのでしょうか? それは次のような理由があるからです。
① 放置されて荒れていく家屋が、なんらかの理由によって倒壊した場合、周辺の住民やそばを通行していた人たちを巻き込んだ事故になりかねない。
② ゴミの不法投棄や排水溝などが詰まって病害虫の発生や悪臭などで不衛生な環境を引き起こす。
③ 手入れが十分に行われないと、雑草や植栽が茂ったり、外構・外壁が崩れたりして、周辺の景観を損なう。
④ 空き家に不審者や興味本位の人物が入り込むことで空き巣や放火などの犯罪やトラブルを引き起こす可能性が高まる。
できるだけ早く対処して「特定空家」の指定を避ける
政府は増え続ける空き家への対策として2015(平成27)年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策特別措置法)を施行しました。
この法律によって、上記のように安全面・治安面・衛生面・景観面で地域に悪い影響を与える可能性がある、管理されていない空き家を「特定空家」と指定して、対処することにしました。特定空家に指定されると、助言➡指導➡勧告➡命令と順を追って行政から空き家の持ち主に適切に管理するように言い渡されます。しかし、それに従わないでいると最終的には行政代執行として強制的に家屋の解体が行われ、その費用は持ち主に請求されるようになります。
特定空家に指定されると、罰金が科せられたり、固定資産税の軽減措置の除外等が行われたりして、家屋の持ち主にとって不利益が生じてしまいます。そのためにも、空き家を適切に管理し、活用するか売却するか、ご自分たちで管理を続けながら維持するかを決めることが大切です。
なお、特定空家や空き家対策特別措置法については、こちらのコラムでも詳しく説明していますので、参考になさってください。
空き家を所有するうえでの注意点
空き家を所有している人は、前述のようなことを理解したうえで次のようなことを注意して維持管理することが必要です。
① 空き家になった経緯と所有者をしっかり把握。
空き家の多くは、それまでそこで暮らしていた親世代が他界したり施設に移ったりしたことで発生しています。とくに相続の場合は、相続者が複数人いる場合があります。空き家の管理には費用も掛かりますが、そのような場合はその費用をどのように負担するかなどの問題が生じます。そのため、どのような経緯で空き家になったか、その維持管理のための費用負担をどうするかをしっかりと決めておくことが後々のトラブルを避けるために大切です。
② 空き家は火災保険の対象外。
空き家は火災保険の対象外であり、空き家が火災保険に加入する際には一般物件として加入することになります。しかし保険会社によっては一般物件としての加入もできない場合もあります。そのため、もし火災が生じた場合は所有者がその賠償責任を負うことになり、大きな負担となります。空き家になっていると不審者が入り込むなどして防犯・防災面でも大きなリスクを抱えることになります。
③ 空き家の管理には費用がかかる。
自分たちが空き家の管理をするには、現住する場所に近い場所にあればいいですが、離れた場所にある場合は移動のための費用や時間がかかります。また、管理会社に依頼した場合も年に数万円の金額が必要となります。いずれにしても、維持管理に費用がかかります。
④ 適切に管理できていないと特定空家に指定。
前述したように管理がじゅうぶんにできていないために特定空家に指定されると、法的な処分を受けることになるため、指定を避けるためにも適切な管理が必要です。
⑤ 人が住んでいなくても固定資産税が発生。
固定資産税は毎年1月の時点で課税されます。これは人が住んでいない空き家でも収めなくてはなりません。また、特定空家に指定されると、固定資産税の特例措置を受けられなくなって固定資産税が倍増します。
空き家対策としてあるさまざまな空家活用法
いつかは家族とともにそこに戻りたい、親族が集まる場所として取っておきたい等々の理由があって、なおかつ定期的な管理ができるのであれば大丈夫です。ただ、そうでなければできるだけ早期に対応を考えることをお勧めします。では、空き家の対処方法・活用方法にはどのようなものがあるかをここでご紹介します。
空き家をそのまま貸す
貸家としてそのまま貸し出す、という方法があります。これはもっとも手っ取り早い方法といえます。ただし家のなかにある家具や不用品の処分は最低限、必要になるでしょう。
それでも、なかなかそういった状況の家を住まいとして借りてくれる人は少ないかもしれません。例えば、作業員の寮、倉庫といった通常の住まいとは別の使い方をすることも考えられます。また、初期投資を抑える分だけ借りる側にとってはマイナス面のある物件となることが多く、家賃を低くするように求められることも起こりえます。しかし、逆の発想をすれば、「お好きなようにDIYをして、住みやすい環境に変えてください」というようにアピールすると、マイナス面が借り手にとって魅力になる場合があります。
空き家をリフォームして貸す
ある程度の年月、人が生活していた建物は、最低でも壁紙等の張替え、トイレや浴室などのクリーニングなどが必要になります。また、傷んでいる部分があれば補修も必要になります。そういった点を最低限でもリフォームして貸し出す方法があります。初期費用としての出費は必要になりますが、折々の管理・維持費としての出費が継続することを考えると、一時的な初期投資の後は継続的な収入が得られる点は大きなメリットといえるでしょう。
ただしこのときに注意したいのは、リフォームは必要最小限にとどめておくという点です。借り手の立場になることは大切ですが、リフォームに手をかけすぎるとその費用を回収するのに時間がかかってしまいます。
空き家をシェアハウスに
個室がいくつかある場合には、シェアハウスとして貸し出すこともできます。もちろんタンスや棚の中にある不用品を処分しておくことは事前の準備として必要ですが、状態の良い大きな家具類はそのまま利用してもらうことができます。
空き家を民泊に
空き家の活用を考える際に、その1つとして民泊を検討する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは単に家を貸すのとは違い、旅行業法民泊・特区民泊・新法民泊のいずれかの申請が必要です。また、民泊として必要な設備などの条件もあるため、その運営は専門業者に委託するケースが多いです。また、周辺の住民とのトラブル対応なども含めて、十分に検討することが必要です。
空き家を解体して土地活用
建物が老朽化しているものであれば、建物を解体して更地を活用するというのも1つの活用方法です。その例として、コインパーキング、駐輪場、貸しコンテナ、ちょっと目先を変えて貸農園などもあります。また、貸し土地とした場合、「そこに建物を建てて商売をしたい」「家を建てたい」という人がいるかもしれません。
これまでのコラムでも、土地活用として駐車場や農地転用などについても取り上げてきました。どうぞ、こちらもお目通しください。
古家付きの土地として売却
なんらかの活用をしても、そのまま遊ばせていたとしても、やはり維持管理は必要になります。それが負担であり、継続した管理ができそうにない場合、最終的な方法として「売却」があります。売却方法の1つとして古家付き土地として売り出すことがあります。古家である空家を解体するか、なんらかに活用するかは借主に任せます。
空き家に対して倉庫や作業部屋、住まいなどと活用しようと考えている人にとっては利用価値が高いものです。一方、建物の傷み具合によっては「より安く土地を購入したい」という人には、解体費用を負担する分、代金を安くするための交渉材料になります。
その土地がどのような場所にあるか、建物の傷み具体等の状況がどうであるかをしっかり把握したうえで、買手との交渉をすることが大切です。
なお古家付き土地に関しては、こちらのコラムでも扱っています。どうぞご覧ください。
空き家を解体して更地として売却
古家付き土地と異なり、空き家を解体撤去して更地にして売却する方法もあります。この場合、解体撤去費用は生じますが、その分、土地代に上乗せすることも可能です。また、借りる側にしてみれば、更地だと自分の計画にそのまま着手できるといったメリットがあります。
建物を解体して更地にした方がいいか、それとも古家付き土地として売却した方がいいか、悩む点かもしれません。その場合のヒントになるかもしれませんので、こちらのコラムもご一読なさってみてください。
空き家対策を決めるときに大切なこと
空き家になっている家の対処を考える際、不動産の扱いに慣れていないとどうしていいかわからない方や、すぐに行動できない方も多いと思います。そんなときは、一足飛びに活用方法について考えるのではなく、少しずつ考えながら進めていくといいでしょう。まずは、メリットやデメリットについて考えてみてはどうでしょうか。
空き家と土地を所有し続けるメリットとデメリット
【メリット】
・空き家等をもち続けることで、所有権を維持でき、あとからでも活用することができる。
・空き家を活用することで継続的に不労所得としての収入が得られる。
・大きな利益を生まなかったとしても、活用することによる収入で収支のバランスがとれるようになる。
・活用することで「特定空家」に指定されるリスクがなくなる。
・家族や親族との思い出が形として残り続ける。
【デメリット】
・建物の価値は年々減少していく。
・建物の維持管理がきちんとできていないと、特定空家の指定を受けるリスクが高まる。
・立地条件や建物の築年数などによって借り手や活用方法を見つけるまでに負担がかかる。
・不動産業者に仲介してもらったり、リフォームをしたりするための費用負担が生じる。
・貸し出した場合も、貸主として修繕費を負担しなくてはならない。
空き家と土地を手放す(売却する)メリットとデメリット
【メリット】
・維持管理のための精神的・肉体的な負担から解消される。
・固定資産税や維持管理のための交通費等の経済的負担が解消される。
・売却による収入が得られる。
【デメリット】
・売却によって、その家屋や土地が利用できなくなる。
空き家対策を進める際の業者利用のポイント
空き家やその土地をご自身で活用するにしても、売却処分するにしても、不動産の取り扱いのためには不動産業者が、解体作業等については解体業者とともに進めることが必要になります。
不動産業者活用時のポイント
空き家を活用もしくは売却する場合は、不動産業者を利用することになります。ぜひ誠実に、所有者の要望に応えてくれる業者を選んでください。そのためには次のことに注意しましょう。
① 宅地建物取引業の免許をもっている。
不動産業者として活動するためには、この免許が必要です。担当者の名刺や会社のホームページなどを見て確認してください。
② 空き家や一般家屋の売買・賃貸等を得意とする業者。
不動産業者といっても、それぞれに扱うものに得意・不得意があります。アパートマンションなどの賃貸が得意な業者、事務所や店舗などのテナントを専門に扱う業者、新築分譲マンションを専門とする業者などなど。そのなかで空き家における賃貸や一般家屋・一軒家の売買・賃貸を得意とする業者を選ぶようにしましょう。
③ 物件の周辺環境やその会社が取り扱っていない競合する物件の情報にも詳しい。
物件がある地元の情報や、そこに接する近隣地区の情報、さらに自社で扱っている以外の競合する物件の情報などに詳しい業者を選びましょう。そういった情報に詳しい業者は、周辺の環境や競合物件との比較を通して依頼物件の良さを引き出して、よりよい条件で契約を結んでくれることが期待できます。
④ スタッフの態度や言葉遣いが気持ちよく、社内の環境も清潔で整っている。
多くの場合、物件を探している人たちと最初に対応するのは、不動産業者の担当者や他の社員です。そのため担当者をはじめとした社員の態度や言葉遣い、社内環境などの印象も大きく影響してきます。
こちらのコラムでは一軒家を処分する際の進め方や不動産業者の選び方のポイントなどについて詳しく説明しています。どうぞ、お目通しください。
解体業者活用時のポイント
売却する、建て替える、リフォームする、これらのケースで解体業者は関わってきます。さらに解体工事では、近隣の方々への配慮なども大切になることから、工事着工以前から挨拶回り等の準備が必要になってきます。また、多くの施主様は解体工事に慣れていないことが多く、わからないことがさまざまにあり、解体業者の担当者が工事前からさまざまな相談に乗ってくれることが大切になってきます。それらを含めて、次のような点がポイントとなります。
① 解体業者を選ぶ際は、次のいずれからの許認可を得ている業者を選ぶ。
・建設業許可(解体工事業)
・建設業許可(建築一式工事業)
・建設業許可(土木一式工事業)
・解体工事業登録
② 工事中の予期せぬ出来事に対応できるように損害賠償保険に加入していることを確認。
解体工事ではときに不可抗力によって何かを傷つけてしまうようなことが起こりえます。そういった場合にも、しっかりした対応がとれるように業者が損害賠償保険に加入していることが必要です。
③ 決まった担当者がいる。
工事に際してはさまざまな連絡のやり取りや報告などが生じます。そのための窓口として決まった担当者がいることが重要です。その人を窓口に、さまざまなことも相談できます。
④ 担当者以外のスタッフの対応もよく、伝言や対応が迅速で確実。
時には担当者不在などで連絡が付きにくいこともあります。そのような場合でも、会社内でのスタッフがしっかりと内容を伝え、迅速な対応につなげられるように、担当者以外のスタッフの対応や連絡・対処の正確さや迅速さが重要です。
⑤ 工事前から相談に乗ってくれる業者。
解体工事では工事自体のほかに、工事着工前の段階から不用品の処分や周辺への挨拶、諸手続きなど施主様として行うべきことがいろいろとあります。しかし、多くの場合、施主様にとっては初めての場合が多いため、さまざまな相談に丁寧に乗ってくれる業者と担当者が必要です。
一般的な解体工事の流れについては、以下のコラムをご覧ください。
空き家対策のための費用を安く抑えるポイント
空き家対策のためにかかる費用には次のようなものが考えられます。
・維持管理のための交通費、雑費。
・賃貸や売買などの対策のため、仲介や業務代理をする業者を利用する際の費用。
・賃貸や売買に伴う空き家のリフォーム費用。
・空き家の建て替えや売買に際する解体費用。
・空き家建て替えに伴う建設費用。
これらの費用を低く抑えるための共通するポイントには、次のようなものが挙げられます。
① 不動産会社や解体業者を選ぶ際は、複数の業者にあたって比較する。
不動産業者の仲介手数料などは、一定の基準が設けられています。一方、解体工事に関しては、地域や業者によって費用は異なります。そのため、複数の業者から相見積もりを取って費用や対応などを見比べて決定するとよいでしょう。
② 建物内に残った不用品等は自分たちで処分する。
解体工事に際して、建物内に不用品を残したままだとその処分費用が解体費用のなかに加わって、費用を増加させてしまいます。そのため、解体工事着工前にできるだけ自分たちで処分することが、解体費用を増やさないために大切なことです。また、買取サービスやフリマアプリなどを利用することで、不用品と思っていたものが思わぬ価格で買い取られることもありますので、そういったものを利用しながら自分たちで処分するとよいでしょう。
③ 自治体の助成金を利用する。
空き家を解体処分したり、建て替えたり、リフォームしたりする場合について、助成金を設けている自治体が多くあります。しかし申請には、自治体ごとに細かな条件が設定されていますので、直接問い合わせて活用するようにしましょう。
また、建物全体の解体のほか、ブロック塀などの解体撤去の助成金などもあるため、その空き家がある自治体に問い合わせて確認してください。
なお、空き家の解体や活用についてはこちらのコラムでも詳しく説明していますので、参考になさってください。
まとめ
空き家対策は大きな社会課題になっています。しかし、一言で「空き家」といってもそれぞれの所有者が抱える事情や、その立地環境や諸条件などによって対策はすぐには決められません。まずはどのような活用方法があるか、それぞれのメリットやデメリットを所有者の方々の事情に応じて検討することが大切です。今回のコラムがお役に立てれば幸いです。
なお、マトイでは解体工事を通じて空き家を抱える方々の相談相手となれるように努めています。解体はもとより、空き家の活用や土地活用、それに伴う不用品の処分などにわたって幅広くご相談に乗らせていただいています。どうぞお気軽にお声をかけてください。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
どんな些細なことでも丁寧にお答えいたします。お気軽にお問い合せください。
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