解体工事は何日かかる? その準備から終了までの期間を説明
かいたいコラム解体工事において、どのくらいの費用がかかるかといったことと同じほど、気になるのが工期ではないでしょうか。そこで、今回は、工事にかかる期間について説明します。
施主として決定すべき3つの“When”
家屋の解体工事を計画する際、施主様としてはどの業者に依頼するかをはじめとして、いろいろなことを決定しなくてはなりません。そのなかでとくに大切なこととして次の3つの“When”があります。
① いつ見積りを取ればいいか?
② いつまでに契約をするべきか?
③ いつから工事を始めて、工事期間はどのくらいかかるか?
そもそも家屋を解体するということは、解体に続いて新たな予定があるはずです。例えば、家を建て直す、または更地にして土地を売却したり、人に貸したりするということもあるかもしれません。
いずれにしても、解体工事全体にわたる期日をある程度把握しておくことが必要です。それができないと、次の計画に合わせて解体工事を進めることが難しくなって諸々の予定が間に合わなくなる可能性があるからです。
さらに解体工事の期間に余裕がないと、なんとかして次の計画に合わせるために作業員を増員した結果、通常よりも高額の解体費用になってしまった、ということさえ起りえます。また、そういったことを避けて、次の予定を遅らせた場合、売却予定であった土地が買ってもらえない、契約が履行できずにトラブルに発展した、といったことも起こりかねません。
なお、この3つのWhenとともに、解体工事の流れを把握しておくことも大切です。次に解体工事の準備から終了までについて触れますが、こちらのコラムでも詳しく説明していますので、併せてご一読ください。
解体工事の準備から終了までの基本ステップ
解体工事には、その準備から完工にわたるいくつかの段階において、それぞれに必要とされる期間があります。それを無視したり、その日数を切り詰めたりすることで安全な工事と適正な費用、その後の進行に大きく影響を与える可能性が出てきます。こういった事態を引き起こさないためにも、余裕をもった計画が大切です。
そこで、ここでは業者に依頼してからの解体工事のステップとその所要日数について説明します。
ステップ1/工事前
最初のステップは、工事を始める前の準備段階です。これには、諸手続きと残置物の処理が必要になってきます。
工事前の諸手続き
建築リサイクル法の届け出(床面積80㎡未満の場合は不要) | 着工の1週間前までに手続き |
道路使用許申請 | 着工の1週間前までに手続き |
ライフライン各種の停止(水道を除く) | 着工の1週間前までに手続き |
建物除却届(床面積10㎡以内または建て替え目的の場合は不要) | 着工の前日までに手続き |
アスベスト除去の届け出 | 着工の2週間前までに手続き |
解体工事を行うに当たっては、着工前にもいろいろな手続きが必要になってきます。その主なものが上記です。これを見ると、早いもので工事開始日の2週間前、遅いものでは前日までに行うものがあります。このことを考えると、遅くても着工日の1カ月前から、業者に諸手続きを委託するか自分で行うか、自分で行う場合はいつごろが都合がよいか、などについて業者と相談しながら計画していくとよいでしょう。
冒頭に挙げてある「リサイクル法の届け出」は、解体工事を含む建築工事で発生する廃棄物を、可能な限りリサイクルし、廃棄するものは適正に廃棄するための法律に基づいたものです。延床面積80㎡(約24坪)以上の工事に適用されます。着工の1週間前までに自治体に届け出を出し、解体工事現場に工事計画についての「事前周知の標識」を設置します。なお、自治体によっては面積が80㎡未満であっても届け出が必要だったり、届け出期限が14日前までであったりする場合がありますので、確認しておきましょう。その他の届け出においても同様のことがいえます。
また、ライフラインのなかで水道は、解体工事中も使うためにこの段階では停止手続きは行いません。解体工事が完全に終了した段階で停止します。
なお、アスベスト除去の届け出は、アスベストの使用状況などの調査も必要であり、その結果によってその後の工事内容も変わってきます。とくに古い建物などはアスベストを含んだ建材やアスベストを壁などに吹き付けてある可能性が高いので、なるべく早めに調査を行い、それに見合った解体計画を立てることが必要です。
諸々のことを合わせて、解体を検討し始めた段階から、余裕をもった計画で進めましょう。
なお、解体工事に伴うさまざまな届け出については、こちらのコラムでも説明していますので、どうぞご一読ください。
残置物の処理
さらに、着工前に行うこととして重要なことが、残置物の処理です。これに期限を設けることは難しく、強いていえば「ご自身のペースで、できるだけ早い段階から、解体する家のなかを空っぽに近い状態にしておく」ということです。
家具や食器類、衣類などの不用品は、解体時に業者に一緒に処分してもらうことも可能です。しかし、それには費用がかかります。量にもよりますが、不用品の廃棄は意外に費用がかかるものです。それに、不用品の処分を行うことで人手も時間もかかり、結果として工事期間が延びてしまうこともあります。できれば、着工前までに、自治体のごみ回収日や粗大ゴミ回収、リサイクルセンターなどを利用して、ご自分たちで処分することをお勧めします。
不用品の処分を行うのは大変です。自分たちだけでなく、回収業者などを利用する方法もあります。そういったことについて、以下のコラムでまとめて説明していますので、参考になさってください。
ステップ2 養生・家屋本体の解体
延床面積30坪程度の木造家屋 | 4~10日ほど |
延床面積80坪程度の木造家屋 | 2週間~20日ほど |
延床面積が30坪前後の木造家屋の解体工事では、上記のように4~10日ほどかかりますが、建物の大きさ、構造、建材などによっても変わってきます。さらに詳しく日程や費用を知るには、実際に解体業者に現地調査をしてもらったうえで見積書の作成をお願いするといいでしょう。
ステップ3 外構の解体
門柱・門扉 | 1日程度 |
ブロック塀解体(高さ1.2m×延長20m) | 1~2日程度 |
物置・倉庫 | 1~3日程度 |
カーポート・ガレージ | 1~5日程度 |
庭木の伐採・抜根 | 1~2日程度 |
※実際の所要日数は、それぞれの大きさや状態によって異なる。
代表的な外構設備として上記のようなものが挙がります。そのほかに庭石、池、灯篭、物置、門から玄関までのアプローチやスロープなどもあります。家々によって備わっているものの種類やその広さ、構造などは異なります。その違いや周辺環境なども合わせて、作業員の人数や作業時間・作業日数も変わってきます。
とくに外構設備の多くは、コンクリートやモルタル、鉄筋で固めた基礎に支えられています。私たちが常に目にしている地上にある物よりも、この基礎を解体するのに時間がかかります。そのため、外構設備の数や基礎部分の広さなどによって、解体期間も違いが出てきます。
これらの解体工事は、家屋本体の解体工事とは別の付帯工事となります。そのため、付帯工事が多い場合は、1週間程度、工事期間が延びると考えておくとよいでしょう。
ステップ4 整地・完工
建物や外構を撤去した後の土地は、掘り起こされた石や瓦礫、木片などがあり、地面も凸凹した状態です。整地では、それらを取り除いで、平坦な状態にします。
整地で必要なことは、その後の土地の利用方法に合わせることです。それを考慮しないと、後から追加として整地を依頼することになったり、整地の仕上がり状態が悪いことからその後の工事が中断したり、という事態を招く可能性があります。整地には以下のようにいくつかの種類があり、それによっては追加の日数が必要になる場合があります。
【粗整地】
解体後にコンクリートガラ、石、木片、ガラス片、ブロック片などを手や重機で拾い上げ、必要に応じて重機などで地面を踏み固める転圧作業を行います。
【砕石舗装】
さらに丁寧に細かくコンクリートガラ等を取り除き、砕石を敷き、重機や振動ローラーなどで転圧して仕上げます。
【真砂土(まさど・まさつち)舗装】
砕石舗装と同様に丁寧にコンクリートガラ等を取り除き、真砂土を敷いた後から重機や振動ローラーなどで転圧して仕上げます。ガーデニングや庭を造ったり、土地を売却・貸したりする際に用いられます。
ステップ5 解体後の手続き
水道契約の停止 | 1日 |
建物滅失登記 | 1日(完工から1か月以内) |
この段階で水道停止の手続きを行います。しかし、建物の新築などが続いて計画されているなど、その後の計画によっては停止しないで使える状態にしておく場合もあります。
建物滅失登記は、その建物が解体されてなくなったことを証明するための登記です。これを行わないと、建物が存続しているものとなって固定資産税などがかかったままになりますので、大切な手続きです。手続きは、工事が完了してから1カ月以内に法務局で行います。なお、詳細についてはこちらのコラムでも説明していますので、ご一読なさってください。
解体工事にかかる日数の目安
解体工事の工期は、その建物がどのように造られているかによって違いが出ます。また、家屋本体以外の要素も工期に影響を与えます。ここで改めて建物の構造別、そして工期に影響を与える要素について説明します。
木造家屋(延床面積約30坪2階建て)の場合
木造家屋の場合には、すでに説明しているように次のような日数が目安になります。
【延床面積30坪程度、木造2階建て、解体期間】 1週間~10日前後
【延床面積80坪程度、木造2階建て、解体期間】 2週間~20日前後
延床面積が30坪よりも小さかったり、小屋や倉庫程度の大きさだったりする場合は、もっと期間は少なくなります。
その一方で、隣家と壁が接しているような長屋のような造りや、重機が入らないような周辺の道が狭い環境の場合は、重機を使わないで人の手だけで作業を行う部分が多くなって工事日数は長くなります。
鉄骨造家屋(延床面積約30坪2階建て)の場合
【延床面積30坪程度、鉄骨造2階建て、解体期間】 15日前後
【延床面積80坪程度、鉄骨造3階建て、解体期間】 20日~30日前後
部屋数が多い間取り、現場に入るための道路が狭い土地などは、使用する重機が限られたり、手作業の部分が多くなったりすることから、工事日数はこの目安よりも長くなる可能性が高いです。
鉄筋コンクリート造(延床面積約30坪2階建て)の場合
【延床面積30坪程度、鉄筋コンクリート造2階建て、解体期間】 15日~20日前後
【延床面積50坪程度、鉄筋コンクリート造3階建て、解体期間】 20日~40日前後
鉄骨造と同じように、周辺環境や建物の内部構造によっては工事にかかる日数が長くなります。
鉄骨や鉄筋コンクリートの特徴や違いなどについて、こちらのコラムで詳しく説明していますので、参考になさってください。
ビルやマンションといった大型建造物の場合
ビルやマンションなどの場合は一戸建て家屋と異なり、複数の事務所や住戸が入っています。同じ鉄骨造や鉄筋コンクリート造であっても、その構造は細かくかつ複雑になっているため、解体にかかる手間や廃棄物の量も多くなり、工事にかかる日数も多くなると考えておく必要があります。
解体工事日程が増加する要因
ここに挙げた工事にかかる日数の目安は、あくまでも建物の解体にかかる日数です。例えば廃棄物を処分するためにトラックに運び入れる時間などは含まれていません。しかし、廃棄物処分1つを例に挙げてみても、建物が大きくなればなるほど廃棄物の量は多くなり、分別やトラックに運び入れるための時間もかかります。同様に、戸建て住宅でも、集合住宅においても共通している工事日程延長に影響する要因として、次のことが挙げられます。
① 残置物の処分が多い。
② 屋根材に瓦を使っている。
③ 建物にアスベストの吹き付けやアスベストが含まれた建材が使用されている。
④ 付帯工事が多い。
これらについては、事前の現地調査の段階である程度、その量や程度を判断して見積りに反映されます。工事日程や工事の費用などを具体的に知るためには、事前に見積もりをしてもらうことで、より具体的な情報を得られます。
アスベスト使用の有無については現地調査である程度判別して、必要であればさらに詳しい調査を行います。また、残置物などは、施主様ご自身で事前に可能な限り処分しておくことで、処分費用を軽くすることもできます。
なお、令和4年4月1日から、一定規模以上の解体・改造・補修工事を行う業者は、アスベスト使用に関する調査結果を都道府県に報告することが義務づけられます。さらに工事を進めていくなかで、着工前に調査できなかったような部分でアスベストの使用がわかったら、その時点で調査を行い、その結果も随時報告することになります。これによって大幅に工事が遅延するとは考えられませんが、日程に余裕がない場合は若干の影響を受けるかもしれません。
しかし、日数的に余裕をもって現地調査や見積りを行うことで、もしアスベスト使用や残置物などがあったとしても、その対処も計画に組み入れられるので全体のスケジュールに支障を与えることはさほどないでしょう。
なお、無料の現地調査や見積り、ご相談はマトイでもいつでもお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。
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解体工事期間の遅延を引き起こす要因
解体工事では、前述のように事前の現地調査や計画に余裕をもって行うことで、遅延を回避できるものもありますが、突発的な事態で遅延を回避できないこともあります。ここでは、なかなか回避しにくい状態を招く要因を説明します。
悪天候・自然災害
解体工事は屋外で行うために、天候は切り離せない条件です。もちろん、ちょっとした雨や雪が降ってもさほど影響は受けませんが、台風や豪雪、それらに伴う自然災害においては工事が遅延することがあります。
また、梅雨時のように長雨が続いたり、雪が積もったりすると、重機が動かせなくなります。作業員の足場も悪くなって危険性が高まるために、工事を一時中止することがあります。このような気候の変動によって工事に影響を受けやすい時期は次の通りです。
① 梅雨シーズン 6月~7月にかけて
② 台風シーズン 9月~10月にかけて
③ 積雪シーズン 12月~2月にかけて
なお、弊社のこれまでの傾向を見ると、気候以外の条件による変動傾向もみられます。例えば、年度末に当たる2月から3月にかけては企業様からの依頼が集中します。これは年度末の会計処理に関連しているのかもしれません。
一般の方からのご依頼では、「12月末ごろまでに工事を…」というご希望が多く、これらの期間にもご依頼が立て込みます。年内に解体を済ませて、すっきりと新年を迎えたい、年が明けたらすぐに建て替え工事を始めたい、といったお気持ちがうかがわれます。
逆に、5月くらいは注文が緩やかになる傾向です。4月や5月は新しい生活がスタートする時期ですから、あまり煩わしいことは避けて、まずは「新しい生活に注力したい」といったところでないでしょうか。
施主様としては、そのときの気候やこのような背景によって、工事の遅延や工事依頼が集中する可能性があることを認識したうえで、計画を進めることをお勧めします。もちろん、そういった傾向を把握するには業者に直接確認するとスムーズです。そのためにも早めに行動することが大切になります。
残置物
残置物は、事前にある程度は把握できるものです。しかし、それがあまりにも多い場合、処分に時間がかかり、工事期間にも影響を及ぼしかねません。また、マンションやアパートのような集合住宅の場合は、各住戸の収納などに予定外の不用品が残っていることがあります。
また、日本庭園のような大きな石や樹木を設えたお庭のある家の場合、それらが思いのほか深く地中に入り込んでいることもあり、その撤去に予定以上に時間がかかることがあります。解体工事を考えている方で、そういったお庭をお持ちの方は、以下のコラムもご覧になって計画の参考になさってください。
地中埋設物(地中障害物)
地中埋設物には、事前にわかるものとわからないものがあります。わかるものとしては、例えば浄化槽のようにマンホールや点検口が地上に出ていたり、古井戸があります。また、基礎の下にある物でも、図面に記録されていれば、ある程度判断できて、それらの処理をあらかじめスケジュールに組み込めます。
しかし、それ以外で、基礎を掘り起こした段階で発見されるものがあります。古井戸がそのまま埋められていたり、コンクリートの塊や瓦などのゴミが埋まっていたりすることがあります。そのままにしておくと不法投棄ということになります。もしその状態のまま土地を売却すると、後々トラブルになるでしょう。そういった事態を避けるためにも、もし、工期が遅延してもきちんと処分することが大切です。
井戸や浄化槽の撤去についてはこちらのコラムに記載していますので、お目通しください。
近隣トラブル
確かに、解体工事では近隣の方々に振動や騒音などによるご迷惑をおかけします。そのために前もって挨拶を行い、トラブルを招かぬように細心の注意を払いながら工事を行っていきます。しかし、それでもクレームやトラブルが発生すると、その対処のために工事を一時的に中断することがあります。施主様にも、その点をご理解いただくことをお願いしています。
なお、工事を開始するにあたってのご近所の方々への挨拶回りは、ご理解とご協力をいただくためにもとても大切なことと私たちは考えています。挨拶回りについて、こちらのコラムに詳しく説明していますので、どうぞご一読ください。
まとめ
解体工事では、工事を依頼する業者を決めてから現地調査、そして見積りを取ってから工事が始まるまで、1~2カ月かかることがあります。さらに工事が始まると、想定外のことが起こる可能性があります。そのため、ギリギリの依頼だと希望している業者はすでに予定が入っていたり、予定していた時期に工事のスケジュールを組み込むことができないということになりかねません。
これらの事態を避けるためにも、期間に余裕をもって取り組むことが大切です。施主様が納得のいく業者に依頼し、よりよいコミュニケーションを取りながら交渉や進捗状況の確認、近隣の方々への配慮を行うことでトラブル回避も工事のスムーズな進行も可能です。
時間的に余裕をもった計画とともに、業者との協力体制が順調な工事に欠かせない条件だということをご理解いただけると幸いです。そのため、私たちマトイでも、常に施主様とのコミュニケーションを大切に対応させていただいています。どうぞ、細かなことでも、気になることはいつでもお声掛けください。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
どんな些細なことでも丁寧にお答えいたします。お気軽にお問い合せください。
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