相続した家の解体は? 費用や手続きはどうする?
かいたいコラム 親や親族から家屋や土地などの不動産を相続することがあると思います。その際の家屋の状態が住みにくいほど老朽化している、それ以外の理由でも住むことができない、といったとき、解体を考えるでしょう。そんなときに気になるのが、何か特別な手続きがあるのか、費用はどのくらいかかるのか、などということでしょう。
今回は、起こりうるかもしれない「相続」という事態に備えて、その「家屋を解体」するという点から、必要な情報をお伝えます。
実家を相続!解体の前に考えたい相続の基礎知識
まず、知っておきたい相続に関する基本的なことをここでご紹介します。
相続の全体像を把握
そもそも相続とは、亡くなられた方の財産を引き継ぐことを意味します。亡くなられた方を「被相続人」、その方の財産を引き継ぐ人を「相続人」と呼びます。
被相続人の方が亡くなられてから、その方の財産を相続するまでには、次のような流れで進んでいきます。
①死亡届の提出
↓
②葬 儀
↓
③金融機関へ連絡
↓
④生命保険を受け取る
↓
⑤相続財産の調査
↓
⑥遺産分割協議を経て遺産分割
相続は、預貯金や不動産など、被相続人が所有するすべての財産が対象となります。借金などの負債も相続の対象となって、相続人が返済することになります。
また、相続人が複数いる場合は、財産を共有状態で受け継ぎます。分割することは義務ではありませんが、多くの場合は分配します。遺言があれば遺言書に基づいて相続されますが、遺言書がない場合や遺言書に記載がない財産がある場合は、遺産分割協議を経て遺産をどのように分け合うかを決めます。
相続税が控除される項目とその額
相続に際して気になることの1つは、相続税がどのくらいかかるか、ということだと思います。せっかく残してくれた財産も、多額の相続税がかかるため、その多くを売却して納税に充てた……ということも耳にすることがあります。
ただ、こういった周囲からの情報だけで不安を感じる必要はありません。相続に際しては税金の控除もありますので、ここで説明しましょう。
【相続税の基礎控除】
相続税とは、相続によって得た人に課せられる税金です。
これは、預貯金や不動産などで得られる財産の額から、債務や葬儀費用などを差し引き、そこから基礎控除額を引いて計算します。そのため、基礎控除額が大きければ大きいほど、相続税の金額は少なくなります。そして、課税価格の合計額が基礎控除額を越えなければ、基本的に相続税の申告や納税は必要なくなります。
基礎控除額は以下の式を使って計算します。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人が4人いたとした場合、
基礎控除額=3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円 となります。
この例の場合、もしも相続する財産の合計金額(預貯金や不動産などで得られる財産の額から、債務や葬儀費用などを引いた合計金額)が5,000万円としたら、基礎控除額は5,400万円のため、相続税の申告や納税は必要ありません。
【相続税の対象にならない財産】
なお、財産のなかには、相続税の対象にならない以下のものがあります。
*生命保険等:法定相続人1人当たり500万円まで
*退職手当等:法定相続人1人当たり500万円まで
*葬儀費用や墓石、仏壇や神棚などの礼拝用具
*宗教法人や慈善事業、国などへの寄付金
相続する実家の土地や建物の表価額
相続に際しては、その土地や建物の評価額が気になるものです。これら不動産の評価額は決められた評価方法によって計算されます。
【建物の評価額】
建物の相続評価額は固定資産税評価額がそれに当たります。この固定資産税評価額は、毎年贈られてくる固定資産税納税通知書に記載されている金額です。
【土地の評価額】
土地の評価額は、国税庁のホームページなどに公開されている財産評価基準書路線価図・評価倍率表で知ることができます。そして時価の80%が相続税評価額の目安となります。
相続人が複数名存在する場合には遺産相続分割協議を行う
相続人が複数名存在する場合、遺産はその人たちの共有財産となります。その場合、どのように遺産を分割するかを話し合って決めます。これが遺産相続分割協議です。
この協議によって誰が何を相続するか決まったら、遺産相続分割協議書を作成しておきます。これには、相続人全員の署名・実印の押印・印鑑証明の添付を行います。
実家をだれが相続するかを含め、解体・売却などについても、遺産分割協議によって話し合い、決めることで、相続人同士の後々のトラブルを防ぐことができます。
相続する実家の登記の状態と名義変更
家や土地などの不動産を相続する場合、登記がきちんとされているかどうか、名義人はだれになっているかなどを確かめましょう。
遺産分割協議が終了したら、それぞれ相続したもので名義変更が必要なものの名義変更をします。このとき、家屋や土地などについては「所有権移転登記」といった手続きを法務局で行うことが必要です。
なかには、登記をしていなかった、被相続人以外の名義で登記されていた、といった場合があります。その場合は、あらためて登記をすることが大切です。未登記不動産については、こちらのコラムで説明していますので、参考になさってください。
相続する家を解体する際の流れ
実家を相続することになった場合、その建物を建て替えたり、更地にして売却したりといったそれぞれの判断がされることでしょう。そうした、相続した実家を解体する際の流れについて説明します。
実家解体にあたっての残置物処分の留意点
最初に必要なことは、実家の家屋内にある荷物の整理です。
これは、単に解体に備えてだけでなく、遺産相続のためにも必要です。なぜならば、家屋内には相続に資産価値を有するものがいろいろとあります。また、資産価値がないものであったとしても、相続人やそこで暮らし、育ってきた相続人となる人たちにとって思い出の品々もあるわけで、そういったものを分別しながら残置物を処理していくことが大切です。
そのため、処分の時期は遺産相続分割協議を行う前がいいかもしれません。
まずは、次のような流れで進めていくといいでしょう。できれば、相続人が一緒に以下の一連の作業を進めることをお勧めします。
Step1 貴重品や重要書類を探す。
この段階では、次のものを探します。
*預金通帳、*印鑑、*遺言書、*不動産・保険・資産に関する権利証や証券等、*宝石・高級時計などの貴金属、*健康保険証やクレジットカード類、*骨董品・美術品など
Step2 部屋を順番に回って残置物を確認。
ここでは「片付ける」というよりも、それぞれが引き取りたいものを選びます。
選んだものはそのときに持ち帰る、もしくは別の場所に移しておく、わかりやすい印をつけておく、などしておきます。
このとき、相続人以外の親族に形見分けするものがあれば、それも選んで別にしておくといいでしょう。
Step3 古美術商や買取業者・リサイクルショップなどに不用品を買い取ってもらう。
この場合、ゴミと思われるものを捨てたり、掃除をきちんとしてから買取業等に見てもらおう、と思いがちです。しかし、ご自身では「ゴミ同然」と思うようなものでも、必要な人もいます。また、価値のあるものである場合もあります。まずは掃除や自
分たちの判断で捨てる前に、業者に入ってもらい、買い取ってもらえるものを選んで買い取ってもらいましょう。
残ったものは、インターネットのフリマサイトなどを利用しても処分ができます。
この際は、きれいな状態で工夫した写真をたくさんアップすることで、売れ行きが上がるようです。
Step4 残った不用品を処分する。
Step1からStep3までを行うと、家のなかに残ったもののほとんどは廃棄しても問題のないもとなります。そのため、これらについては地域のゴミの回収日に廃棄し、大きなものは粗大ゴミとして廃棄します。また、電化製品等は別の廃棄方法があります。こちらのコラムで詳しく説明していますので、参考になさってください。
実家解体の流れ
遺産分割相続協議を行って家屋の解体が決まったら、次のような流れで解体に向けて進めていきます。
Step1 解体費用や工期などについて複数の業者から相見積りとして取る。
業者の相見積もりや剪定を含めた解体工事の事前準備等について、こちらのコラムで取り上げています。どうぞご一読なさってください。
Step2 建物内に残っている、不用品等を処分する。
残置物や不用品の処分についてはすでに説明していますが、こちらのコラムでは東京都練馬区の廃棄物処理費用の相場を例に挙げて説明しています。視点を変えての参考になると思いますので、ご覧ください。
Step3 選定した業者によって解体工事を行う。
解体工事の具体的な流れや、工事に係る日数などについて、こちらのコラムで具体的に説明していますので、参考になさってください。
Step4 解体工事が終了したら、建物滅失登記を行う。
建物滅失登記については、こちらのコラムで説明していますので、ご覧ください。
なお、相続した建物が未登記であった場合は、家屋滅失届という届出を市町村役場に届け出ます。この届出についてはこちらのコラムで説明していますので、ご覧ください。
Step5 相続人による相続登記申請を行う。
相続した不動産を自分の名義にするためのもので、法務局で行います。
Step6 相続人の選択による新家屋の建築、更地の売却などを行う。
自分の目的に応じた方法で相続した土地を活用します。
相続する家を解体する?しない?
相続した不動産をどのように活用するかは、相続した人の考えによるもので、解体はその1つです。しかし、その判断をするためには、解体することのメリットとデメリットについて、しっかり把握しておくことが大切です。
解体することのメリット
解体することのメリットには、次のようなものが考えられます。
【空き家を管理する負担がなくなる】
「いつか活用するかもしれない」と思って空き家のままにしていても、老朽化した建物自体やブロック塀、庭の植栽による近隣への影響などがあって、適切な管理は欠かせません。そして、そのための時間の確保、交通費や管理に必要な雑費、そして維持していくための光熱費などの負担が生じます。しかし、解体することで、それらの大半がなくなります。
【更地にすることで、遺産としての土地を他の相続人と分け合うことができる】
その家屋や土地の相続が決まらない段階で、家を解体して更地にすることで、その土地を他の相続人と分け合えることが可能になります。広い土地であれば、土地そのものを分割することもできますし、更地にして売却し、その代金を分けることもできます。
【古家付き土地よりも更地の方が売却しやすい】
もちろん、建物を解体しなくても古家付き住宅として売却することも可能です。その際、建物の状態にもよりますが、一般的には古家付き住宅よりも更地の方が売却しやすい傾向にあります。
古家付き土地については、こちらのコラムでも取り上げています。古家付き土地の対処法、逆に古家付きの土地を購入する側の立場としてのメリットとデメリットなどについても説明していますので、参考になさってください。
【空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除が利用できる】
被相続人が住んでいた家を、相続人が相続した年から3年後の12月31日までに売却し、特別控除の適用要件を満たしていれば、その譲渡所得から3,000万円の特別控除を受けられる場合があります。解体を行う際に、市町村役場の空き家担当窓口に問い合わせて、検討することをお勧めします。
解体することのデメリット
もちろん、メリットがあればデメリットもあります。解体に伴うデメリットについて説明します。
【解体費用がかかる】
相続した家屋を解体する際の最大のデメリットは、解体費用がかかることといえます。もしも相続した不動産が、不便で土地活用しにくく、売却価格がさほど高く見込めないような場合、解体費用が土地の売却価格より下回ってしまうと赤字です。そうならないためにも、事前の見積りなどで確認して注意しておきましょう。
【固定資産税が高くなる】
家屋が建っている土地では、「住宅用地に対する課税標準の特別措置」が適用されて固定資産税は低く抑えられます。しかし、家屋を解体して更地にすると、土地だけの固定資産税となって、この特別措置を受けられなくなります。その結果、固定資産税が高くなる、ということが起こります。
【解体しなくても売却できる】
メリットとして、更地の方が売れやすいということを説明しました。それと連動することですが、家屋を解体しなくても売却することは可能です。しかし、その分、価格が抑えられたり、買手から解体費用分の値引きを要求されたりして、売却に伴う交渉が煩雑になる傾向があります。
【解体費用は相続税控除の対象外】
相続した家の解体費用は、相続財産の評価額から差し引くこと(相続控除)はできません。しかし、相続後に土地を売却する際には、譲渡費用として譲渡所得税から控除できます。
相続する場合の解体費用はだれが負担する
家屋を相続した際に、気になるのが解体費用です。決して安くない解体費用はどの程度を想定したらいいのか、だれが負担するのか、どのように賄うのか心配になることでしょう。
知っておきたい解体費用の相場
まず、解体費用としてどのくらいの金額が必要になるのかが気にかかるでしょう。
解体費用は、主にその建物の構造、延べ床面積などの広さ、で大まかな金額を見積もることができます。それぞれの構造別の坪単価に建物の延べ床面積の坪数をかけることで、大まかな費用の目安を算出できます。
そこに建物の状態や周辺の環境などが加味されます。
構造別の建物の解体費用の大まかな目安は、次の表にある坪単価を基に計算できます。ただし、これはあくまでも“目安”にすぎません。もう少しご自身が相続する建物の状況にあった解体費用の相場を知るためには、見積りを取ることが必要です。
【解体費用の坪単価】
建物の構造 | 解体費用の坪単価 |
木 造 | 30,000円/坪~ |
鉄 骨 造 | 40,000円/坪~ |
鉄筋コンクリート造 | 50,000円/坪~ |
なお、家の解体費用に関する基本的なことについては、こちらのコラムで説明していますので、お目通しください。
1人が相続する場合
相続人が1人の場合は、解体費用はその人が負担することになります。
複数名で相続する場合
相続人が複数名いる場合、解体費用については次のような方法があります。
① 複数名相続人がいるなかで、そのうちの1人が家と土地を相続する場合は、その人が負担する。
② 解体費用を相続人で分割して負担し、土地の売却代金が入ったらそれも相続人で分割して受け取る。
③ 特定の相続人が解体費用を立て替え、売却代金が入ったら立て替え分を回収して、残りを相続人分で分割して受け取る。
実家の解体に活用できる助成金
自治体ごとに家屋解体に際して、さまざまな助成金等を準備しています。これは空き家対策や街の景観保持、防災等を目的としたものですが、実家の解体についても活用することができます。ただし、自治体によってその内容や要件などが異なってきますから、それぞれに直接確認することが必要です。
【老朽危険家屋解体撤去補助金】
これは老朽化して倒壊する恐れがある建物を撤去するための補助金です。
この補助金を受けるには、耐震診断をしたり、自治体の認定を受けたりする必要があります。それによって要件を満たしているとなれば、解体費用の1/5から1/2程度の補助金の支給を受けることが可能です。
【都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金】
都市の景観を守るために、長期間放置された家屋の解体費用を補助するためのものです。支給条件として、その家屋の所有者や相続関係者に、解体工事を行って景観形成基準を満たす土地利用を行うことが求められます。
補助内容は、解体費用の1/5から1/2程度の補助金の支給を受けることが可能です。
【建て替え建設費補助金】
建て替えをする場合に使える補助金です。老朽化した家屋を、自治体が定める一定基準を満たす住宅に建て替える場合に、解体費用と建築費用の一部が補助されます。
解体費用の支払いに関しては、補助金の活用とともにこちらのコラムでも取り上げて説明しています。こちらも合わせてお読みください。
相続をスムーズかつ穏やかに進めるために
遺産相続に際しては、きょうだいや親族間で意見が食い違ったり、途中で意見を変える人が出てきたり、予想外の費用がかかったり、などでトラブルが起こることがあります。そこで、できるだけ穏やかに相続のための話し合いを進めるためのポイントを考えてみましょう。
●相続の必要性が発生した段階で相続人同士が集まり、直接、話し合いをします。
このときは、実家の片づけをしながら相続に関係するものを取り出したり、確認したりするための準備やその進め方、話し合いのスケジュールなどを決めます。
●遺産相続に関する話し合い(遺産相続分割協議)を行います。
この話し合いは、1回では済まないことも考えられますので、その状況に合わせて無理のない、みんなが納得するスケジュールを組みましょう。
●話し合いは、最初から弁護士等をたてると、抵抗を示す人や感情的になる人がいます。できれば、最初は相続人同士、それで話し合いがもめそうな場合は、親族のなかで冷静かつ中立的にその場を見守ってくれる人に立ち会ってもらいましょう。
●それでも、こじれそうな場合は弁護士等の専門家の介入を検討しましょう。
●相続に関連しての手続きや話し合いなどでなんらかの費用が生じる場合は、できる限り抑えるようにし、それらの金額をだれが見ても理解し納得できる形で記録しておきます。
そして、最後に精算するようにしましょう。たとえ一人ひとりが負担する出費は小さなものであっても、相続全体の話がこじれた場合には、ちょっとした費用負担がさらに話をこじらせる要因になることがあります。
●それぞれがお互いに配慮することで、相続の話し合いは穏やかに進めることができるはずです。そうして導き出された内容は、遺産相続分割協議書としてまとめておきましょう。
まとめ
相続に伴うさまざまな対処は、不動産だけではなく多岐にわたります。そのため、相続人はいろいろなことへの対応が求められます。
さらに控除などの税制や自治体ごとの補助金制度もその時どきで変更されていることもあります。相続の事態が発生した段階で自治体や関連団体ごとに直接問い合わせて確認したり、不動産会社や司法書士などに相談したりすることが必要になってくる場合もあるでしょう。そして同じ相続人となるきょうだいや親族の方々とのやり取りの負担も生じます。
そんなとき、まずは身近にフランクに相談できる存在があると、次へのステップへと移りやすくなるかもしれません。マトイは皆様にとって、そうした存在でありたいと思っています。どうぞお気軽にお声を掛けてください。
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記事の監修
株式会社マトイ 営業担当菅野(かんの)
株式会社マトイ営業部の菅野です。コラムの監修をしております。
実際に仕事の中で経験したこと、調べてより勉強になったこと、両方を読んでくださる皆さまと共有できたらと思っています。
解体は初めてのご経験という方、とても多いのではないでしょうか。
ご不明な点やご要望、疑問に思われていることはございませんか。
どんな些細なことでも丁寧にお答えいたします。お気軽にお問い合せください。
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